Coffee and Contemplation

海外ドラマや映画、使われている音楽のことなど。日本未公開作品も。

今年4-12月に観た(ほぼ)新作ラブコメ27本の感想まとめ

  1. Sempre più bello(ずっと、欲ばりなだけの恋じゃなくて)


Netflixイタリアの"欲ばり"三部作最終章。もはやラブコメより難病メインで2作目と同じ感想としか言えない。なぜ観た私。
 
  1. The Lost City(ザ・ロストシティ)


大物キャストの劇場公開作ということで期待していたが残念ながら全く笑えなかった。サンドラ・ブロックの役が夫を亡くしテンション低め設定なのでせっかくのド派手なシーンもドタバタ感半減、チャニング・テイタムとブラピの対比も中途半端、ダニエル・ラドクリフの悪役も面白ポジションなのに面白みがなかった。
 
現代的な男女のパワーバランス等は比較的とれているが、主人公がロマンス作家とはいえ例によって先人の愛に美しさを見出す流れは本当にいらない。肝心のロマンスもそこまでケミストリーは感じられずチャニングの切ない眼差しで乗り切った感。
 
  1. The Valet(スターは駐車係に恋をする)


これは入れるか迷ったが、ラブコメの外ヅラをして実はラブコメではないというクセモノ。世界的に有名なハリウッド女優のオリヴィアの不倫を隠すため、新しい恋人のフリをする要員として駐車係のアントニオが雇われる。
 
※ネタバレ注意
 
今どき30歳以上離れてるサマラ・ウィーヴィング ×エウヘニオ・デルベス(『コーダ あいのうた』の音楽の先生)の組み合わせって…と最後の方まで心配させておいて、2人は恋仲には全然発展しないのだ。もしそういう展開になったとして抵抗のない作り手だから平気でそういう仄めかしをするのだと思うが、この2人はないだろうと思っている身からすると意地悪以外の何モノでもない上に、誰も大して魅力的に描かれていなくて本当に何がしたいのか分からない。
 
一線は守るとはいえ、20代女性がこんな歳上の見知らぬ男性にベタベタ頼るのは男のファンタジーにとどまっているし、メインの教訓が「白人の金持ちも悪い人ばかりじゃないよ」という感じで薄っぺらい。フランス映画のリメイクらしいがどこまで忠実なのだろうか。
 
良かったのは『Marry Me(マリー・ミー)』の比でないくらいスペイン語の量が多かった点だが、食べ物や文化もそこまでちゃんと見せるわけでもなく、韓国系の家族もおまけのようだった。周りの人をやたらカップルにするのは私の一番嫌いなやつだ。
 
  1. Fire Island(ファイアー・アイランド)

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  1. My Fake Boyfriend(ニセモノ彼氏)


スタントマンのアンドリュー(キーナン・ロンズデール)がまたダメな元彼の元に戻ってしまうことを危惧した親友のジェイク(ディラン・スプラウス)は、フェイク画像でインスタ上にアンドリューのニセモノ彼氏を作る。しかしその存在はアンドリューが新たに出会ったシェフのラフィ(Samer Salem)との距離を縮める障壁となり…。
 
せっかくのキーナン・ロンズデール主演のゲイラブコメなのに、ディラン・スプラウスとサラ・ハイランドの親友カップルはうざいだけだしマジカルアジア人に愛とは何か語らせる雑脚本。ニセモノ彼氏がどんどんインスタ有名人になっていく様子も説得力はない。
 

6. 恋は光

 

ウルトラジャンプ』の同名コミックが原作。「恋をしている女性が光って見える」という特異体質の大学生・西条は、「恋というものを知りたい」という文学少女・東雲に一目ぼれし、恋の定義について語り合う交換日記を始める。西条にずっと片思いしてきた幼なじみの北代と、他人の恋人ばかり好きになってしまう宿木も混じり、四角関係に…。
 
このタイプの邦画は9割方好きではないだろうと予想しながら、評判が良かったので望みが捨てきれない&観た人と話したい&ラブコメ好きとしての使命的なものを感じて観てきてしまった。やはり邦画的な演技演出や、白飛びした化粧で肌のっぺりの映像が苦手だったが、とにかく女の子を可愛く撮ろうという心意気が感じられ、岡山の街並みはきれいでこういうタイプの映画に出てくるとは思わず意表をつかれた。しかしそこを推すなら人がいるショットばかりでなくもっと街の息遣いが見えるようなショットがほしかった。ファッションは日本の大学生ぽくはあったけど、どの子もあんまり好みではなかった。もっとシンプルなのや逆に尖ったのがいい。しかもほかの人も言っていたのだが、ずっとわりと個性のあった北代の服装が、最後だけコンサバな感じになっており、ひたすら首をかしげた。恋する乙女は女らしい服装になる、とかいう理由なのだとしたら嫌すぎる。東雲は家族が全員事故だか病気だかで亡くなっており、おばあちゃんから受け継いだ古民家に住んでおばあちゃんのお下がりのレトロな服を着ているのだが、古風な女性を演出するためのその設定も好きじゃない。私は実際元祖母の家に住んでおり、服もいくつか保存しているが、そんなにきれいな状態で若い人も着れる服はたくさんは残っていない。
 
肝心の本筋のほうだが、まず、理屈っぽい大学生のキャラが定義とか哲学とか言うなら、本気で文学だけじゃなくて先行研究探したりサンプルを集めまくってから語ってほしい。西条は東雲に好意があるとはいえ、本当に真面目に語りたそうな変わったキャラの設定なのに、結局それを理由にコミュニケーションとりたいだけで、議論が浅すぎる。さんざん語った末に恋は厄介だ、とかmessyだ、みたいな結論になるのは別に良いのだが、その過程も稚拙なら高校生くらいの設定で良かったと思う。それかもっと西条や東雲に人間味を持たせて、ただ身近な例を見ながら恋ってなんだろねと悩みながら話してたら深みにハマってしまって文学とかも掘ってみた、くらいの感じにしてほしかった。『ハーフ・オブ・イット』も詩を使うのはいいけどやたら深そうに見せようとするところが好きでなかったんだよな。なので一番共感するというか好きだわーと思ったのは「そうだと思ったものが恋だろ何つべこべ言ってんだ」派の宿木だった。しかし奪うやつは好きじゃない。
 
全員俺のことが好き、みたいな都合良さは男女逆にすると大いにあるパターンだし嫌いじゃないはずだけど、主人公に魅力か人間味がイマイチ感じられないために何チヤホヤされてんだ…となってしまった。大学のほかの男どこ行った。しかも後からあらすじを読んで気づいたが西条は「恋をしている“女性”が光って見える」だけであって、男性は光って見えないのだ。そんな男女二元論な特殊能力があるか。
 
※以下ネタバレ
 
東雲も西条のことを好きになるのだが、西条は東雲への思いは憧れだったと気づき、あなたとは付き合いたいんじゃなくて憧れでした、などと長文の手紙を渡す。憧れも恋の一種だ、みたいな見方はしたいなら勝手にすれば良いが、最初に自分からアプローチしておいて振るのにそのやり方は最低だ。あの人にはそれが誠実な対応なのだみたいのはいらない。
 
女子3人が敵対しないしベタベタもしないのは良かったっちゃ良かったのだが、恋敵なんだから敵対したっていいのではと思った。敵に「辛い」と本音を晒しながら仲良くするなんて無理だ。ちゃんと喧嘩できる人に憧れる。それを「女子って怖い」とかすぐ言わなきゃいいのだ。

7. Fast & Feel Love(原題)


『Heart Attack(フリーランス)』『Happy Old Year(ハッピー・オールド・イヤー)』でハマったタイのナワポン・タムロンラタナリット監督最新作。これも迷うところではあるが、かなりラブコメの流れを踏襲していることは確かなので入れておきたい。
 
スポーツスタッキングに人生をかけるカオ(ナット・キッチャリット)。ある日長年支えてくれた恋人のジェイ(ウッラサヤー・セパーバン)に去られ、生活に四苦八苦する。
 
男性のセルフケアがテーマというには甘いかもしれない。パラサイトやワイスピ、MCUといったポップカルチャーネタが満載で、スポーツモノというにはシュールすぎるコロナ禍のスポーツスタッキング大会や度々入る謎のメタ目線、露骨なほど強くなったコメディ色と、正直カオスなんだが軸にある恋愛の描き方が憎めない。
 
過去に思春期や恋愛モノを撮り、ズバリLoveと入れたちょいダサタイトルの強火コメディって、タイカ・ワイティティと同じでは?!と思った。MCUが好きみたいだし、どの監督が好きか聞いてみたい。
 

8. Mr. Malcolm's List(原題)


’09年の自主出版小説が原作。マルコムさん(ソープ・ディリス)の”結婚相手の条件リスト”に見合うかこっそりテストされ落とされたことに腹を立てたジュリア(ゾウイ・アシュトン)は友人セリーナ(フリーダ・ピントー)に復讐への協力を頼むが…。
 
※ネタバレ注意
 
社交界のゴシップがイラストニュースになって出回る部分などはまさにブリジャートンで、ジェーン・オースティンというよりは二次創作やヤングアダルト小説のような味わい。定石通りセリーナはマルコムさんに気に入られ2人は恋に落ちるわけだが、私はジュリアに肩入れしてしまって彼女が悪者になることに憤慨してしまった。そりゃ一度は復讐に協力すると言っていた友人が自分には優しいからといって手のひらを返すのはつらい。まったくの悪者になるわけではなく救済はあるのだが。
 
マルコムさんがそんなリストを作る理由も「うまくいかなくなることが怖くて人を遠ざけているから」といった感じで寒く、いやただの鼻持ちならないやつじゃん…と思ってしまったので、ソープ・ディリスは良かったのだがそちらより悪者でもジュリアに興味を示してくれるヘンリー(テオ・ジェームズ)が魅力的だった。
 
こんな感じでなんだかんだ入れ込んでいるのでそこそこ楽しんだのだと思うが、家来2人もカップルにする部分は嫌いだった。ラブコメのおまけカップル定番化反対。
 

9. Wedding Season(ウェディング・シーズン)


Netflixの映画のほう。両親からの干渉を止めるために交際を偽装し結婚式シーズンを乗り切ろうとするアシャ(Pallavi Sharda)とラヴィ(Suraj Sharma)だが、次第に本当に惹かれ合い…。
 
主役2人の魅力とテンポの良さでネトフリのラブコメにしてはよくできている感じだったが、えらく無難。移民が主役の作品は嬉しいが結婚観が後戻りすることが多くてきつい。
 
実際に保守的な結婚観の家なんて日本も世界どこでもたくさんいるだろうしそういう現状を描く必要があるのも分かるし、たいていはちゃんとそこに抗う主人公や多様な選択をする人を描いてはいるのだが、私はその先が観たい。
 

10. Badhaai Do(原題)


ゲイの警官Shardul(Rajkummar Rao)とレズビアンの教師Sumi(Bhumi Pednekar)がお互いの社会的体裁を保つために偽装結婚する話。
 
マイノリティの苦悩の物語としては想像の域を出ないし、子作りしてるか見張ろうとまでする家族の干渉や拒絶が本当にキツいが、インド映画でこの設定をやりきれるんだというのは発見だった。感想を漁っていると、LGBTQ+作品は徐々に出てきているが、養子縁組まで踏み込んだのがどうやら画期的らしい。
 
歌って踊る楽しいシーンや大げさBGMのわかりやすい一目惚れシーンもちゃんとあり、ゲイの夫の男尊女卑も浮き彫りにするのが良かった。家族が多すぎてどれがおばさんでどれがお母さんか見分けるのに時間がかかった。
 
Sumiのパートナー役のChum Darangは数々のミスコンを制してるらしくめちゃくちゃ可愛いのだが、インド映画で東アジア系の人見るのは初めてだと思ったら多民族を抱える北東インドの出身だそうだ。
 
『ウェディング・シーズン』もこちらも保守的な親の干渉を止めて平穏に過ごすために偽る話だったが、ヘテロとゲイでは"今描いてほしいのはこれなんだ"という時代感が全然違うことを痛感した。

 

11. Wedding Season(ウェディング・シーズン)

 


「アクションコメディロマンティックスリラー」を謳っていたので観てみたイギリスのドラマシリーズ。Netflix映画とはまったく関係ない。
 
ケイティ(ローザ・サラザール)の結婚式で、新郎とその家族が全員殺される。警察はケイティの愛人ステファン(ギャヴィン・ドレア)を疑い、ステファンはケイティを疑い、ケイティは元夫を疑っているが…。
 
あまり観たことない感じのカオスなテンションで真相が気になるしテンポは良いので最後まで観れたが、ずっとカオスなだけでコメディセンスも恋愛モノとしてのエモーショナルな部分もミステリーの種明かしもそんなに面白くなかった。
 
ファム・ファタルに振り回されるアホだけど人のいい俺、周りが結婚していって寂しい俺でも誠実でいれば運命の女性が現れる、ファム・ファタルも振り回すだけのクールな女じゃなくて混乱してる一人の人間味ある女性、みたいなことがやりたかったのだろうか。
 

12. Top End Wedding(原題)


アボリジニの女優ミランダ・タプセル脚本・主演、『Bohemian Rhapsodyボヘミアン・ラプソディ)』や『The Great(THE GREAT ~エカチェリーナの時々真実の物語~)』のグウィリム・リー共演。彼女の故郷で挙式しようと2人で実家に行くと、母親が家出していたことが判明し…。
 
故郷を離れる葛藤や文化描写は浅かったが、主演2人がかわいく、とことんベタなドタバタをやってくれて楽しかった。こういう時マイノリティなのはいつも女性側な気がする。主人公の親も母親が先住民で父親白人だし。
 
結婚式やハレの日の儀式だけでなく、日常の文化を観たい。先住民のバンドの曲が聴けたのは良かった。
 

13. Meet Cute(ミートキュート ~最高の日を何度でも~)

 

※ネタバレ注意
 
Palm Springs(パーム・スプリングス)』ぶりのタイムループラブコメか?!と思ったら少し違った。思い詰めた主人公シーラ(ケイリー・クオコ)はタイムループにハマってしまったわけではなく、完璧な一日から抜け出したくないがために自らタイムトラベルでわざわざ24時間前を選んで毎日戻っているのだ。
 
その一日とは素敵な男性ギャリー(ピート・デヴィッドソン)との出会いの日。どんなパターンをシーラが選んでも完璧な対応を繰り出すギャリーだが、何回も繰り返していればそりゃ飽きがきたり、完璧ではない部分も見えてくる。それでも次の日には進まず永遠と同じ日繰り返しているシーラの気持ちは分からなくない気もするが、相当な問題を抱えていることがわかる。
 
正直ストーリーとしては消化不良なのだが、メンタルヘルスにここまで向き合おうとしたラブコメはなかなかない。ベタにベタを塗り重ねる作品が多い中、冒険していること自体が嬉しく、こういう実験的なビデオスルー映画あったよなあと懐かしくなる。
 
『About Time(アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜)』では関係を上手くいかせようとタイムトラベルを使える側が一方的に過去を変えまくるのが我慢ならなかったのだが、それは執着だ、おかしいときちんと言ってくれるところもこの映画は好感度が高い。
 
一人でバタバタやっているケイリーもナイーブなピートもいつもの感じで配役の理由は分かるが、ケミストリーがあったかというと疑問だ。ピートはいつもちょっとワルだったり変人要素が足されるが、今回はものすごく良い人で、面白味はあまりなくなってしまった感じだった。
 
既に何回か昨日に戻ってるところから始まるので、2人の本当の最初の出会いは見せてくれないのが不満。
 

14. Maggie(マギー 恋するフォーチュンテラー)


触った相手の未来を見ることができる超能力者のマギー(レベッカ・リッテンハウス)。パーティーで出会ったベン(デヴィッド・デル・リオ)と結婚する将来を予知し彼と一夜を共にするが、その後彼が別の人と結婚する未来を見てしまう。
 
未来が見えてそれがいつも確実だからといって何でもそれに沿って行動したり他人にもそれに従わせるマギーにはイラついたが、ニコール・サクラ演じる親友はじめどのキャラも皆可愛いし、ピート・ウェンツなどの世代ネタが刺さるし、とても軽く見られてかつ割と地に足ついたスキマ時間に最適なドラマシリーズだった。よくある何シーズンもかけて2人はいつくっつくの?(Will they won't they)をやるパターンだっただろうに、思い切りクリフハンガーで終わったままシーズン1でキャンセルされてしまった。
 

15. Rosaline(ロザライン)


ロミオとジュリエットの仲を引き裂こうと画策するロミオの元カノ・ロザライン。テンポよく面白くはあったが、もっとコメディに振り切れて良かった気がする。そもそもラブコメというより嫉妬に駆られた女がどうなるの?!というこれまで観たことのなかった話を勝手に期待してしまったので、都合良くロミオの後釜ダリオが現れ収まるところに収まる王道ラブコメ展開に拍子抜けしてしまった。
 
ロザラインとジュリエットの衣装はぜんぶ可愛く、アホっぽいロミオもテキトーな家来役のニコ・ヒラガも、無駄に脱いだり距離が近かったり自分の役割をやたら心得ているダリオも最高だった。
 
RobynやRoxetteBrandyといったラブコメおなじみ曲をカバーした『Dickinson(ディキンスン)』のDrum & LaceとIan Hultquistによるスコアも注目。もっとロックテイストを加えたりして尖らせても良かったんじゃ?とは思ったが、それだと同じDisney+でリリースされたばかりの『ザ・プリンセス』と近すぎるかもしれない。
 

16. Bros(原題)

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17. Ticket to Paradise(チケット・トゥ・パラダイス)


ジュリア・ロバーツジョージ・クルーニーがはしゃいでいる、ということに特に面白みを見いだせない自分には無だった。ケイトリン・デヴァー演じる娘も婚約者もとにかく記号的。
 

18. 연애 빠진 로맨스(恋愛の抜けたロマンス)


元カレとの別れから恋愛引退を決意したが、寂しいのは嫌なジャヨン(チョン・ジョンソ)。セックスコラムの担当を命じられたライターのウリ(ソン・ソック)。マッチングアプリに登録した2人が最初はまったく期待していなかったが次第に惹かれ合っていき、微妙な関係が始まる。
 
主演2人がとても魅力的で最後まで観れたが、全体的に薄味で、何より男のしたことがかなりアウトだった。
 
ブコメの主人公恋愛コラム書きがち。それが男パターンなのはたまには良いんだけど。
 

19. Falling For Christmas(フォーリング・フォー・クリスマス)


ボーイフレンドからスキー場でプロポーズを受けた直後に崖から落下し、記憶を失った大手ホテル社長令嬢のシエラ(リンジー・ローハン)。ジェイク(コード・オーヴァーストリート)に発見され、彼の小さなロッジを手伝うことになるが…。
 
お決まりのドタバタやほっこりがあって「頭空っぽにして楽しめる」と言いたいところだが、お決まりすぎて何も面白みがなく、進歩もなさすぎてこれは無難とももはや言えない。ジェイクの亡くなった妻とその母、娘がPoCではあるがそれくらい当たり前なのであって、小さい娘が「パパに愛する相手ができるように」サンタに願うという恋愛至上主義や、ギャグキャラと化した婚約者の一瞬のクィア仄めかしが耐え難い。
 
リンジー・ローハンが復帰したという事実以外は何も残らなかった。
 

20. Christmas with You(クリスマス・ウィズ・ユー)


落ち目のラテン系ポップ歌手アンジェリーナ(エイミー・ガルシア)は、曲作りから逃げて自分の大ファンだという少女に会いにいく。大雪で戻れなくなり、少女の父親の教師ミゲル(フレディ・プリンゼ・Jr)の家で彼と一緒に作曲することに。
 
『Marry Me(マリー・ミー)』と『Music and Lyrics(ラブソングができるまで)』をまんま組み合わせたみたいな怠惰な作り。めちゃくちゃスペイン語をしゃべっていて、ラテン文化をrepresentしようという意気込みは今年のほかのどの作品より感じられた。JLoにはとても勝てないが、エイミー・ガルシアはスター感がとても板についてたと思う。『She's All That(シーズ・オール・ザット)』ぶりに見たフレディ・プリンゼ・Jrはただの良い人っぽすぎて、それが好感度高くもあり、弱点でもあるという感じ。
 

21. Your Christmas or Mine?(あなたの、私のクリスマス?)


学生カップルのジェームズ(エイサ・バターフィールド)とヘイリー(コーラ・カーク)は、どちらも相手を驚かそうとしたために、クリスマスをそれぞれの相手の実家で過ごすことになる。
 
期待はしてなかったけどやっぱり何も面白くなかった。他人の家を勝手に飾り付け始める図々しいだけのヘイリーはじめ、ジェームズにセクハラまがいのことをするヘイリーの姉など登場人物が誰も魅力的じゃない。ネタバレとかもう知らんが、犬を誤って傷つけるシーンがあって、生きてました良かったねー!オチなのが酷い。ダニエル・面白・メイズの無駄遣い。エイサ・バターフィールドはいい加減作品を選ぼう。
 

22. Something from Tiffany's(ティファニーの贈り物)


恋人にプロポーズしようとティファニーで指輪を買った作家のイーサン(ケンドリック・サンプソン)。しかし手違いで同じくティファニーで買い物をしたゲイリー(レイ・ニコルソン)が持っていたイヤリングと入れ替わってしまう。指輪を取り戻そうとゲイリーの恋人でパン屋のレイチェル(ゾーイ・ドゥイッチ)に接触するが…。
 
※ネタバレ注意
 
レイチェルが指輪をイーサンに返すときに、黙ってパンの中に仕込む意味がわからない。イーサンがレイチェルの仕事の予定も聞かないで「好きなら○時までにここに来て」とメッセージする意味もわからない。ご都合主義が許容範囲を超えた。ラブコメっぽい流れをとりあえず入れればいいわけではない。
 

23. Croce e delizia(泣いたり笑ったり)


金持ちの美術商トニと、漁師・魚屋のカルロが同性婚すると宣言したことから始まる2家族の騒動。
 
劇中良いものとしては描いてないのだが、私には家族の干渉がキツすぎた。過去に色々あったとして、差別思考だったとして、親の再婚が気に食わないなら大人なら黙って距離置きなよと思ってしまった。その点プロットの出発点がほぼ同じであるNetflixドラマの『Grace & Frankie(グレイス&フランキー)』のほうが2人の男性の関係を壊そうとする人はいなかったのでだいぶ心地良かったが、長年連れ添ったそれぞれの妻を傷つけるという点においては、妻は離婚しているか亡くなっているこちらのほうが安堵した。いずれにせよ、誰かを傷つけたり反発する人がいないとドラマは生まれないのだろうか。
 

24. Smiley(スマイリー)


バルセロナが舞台のNetflixドラマ。ゲイバーで働くアレックスは元カレに怒りの留守電を残したつもりが、建築家のブルーノがその留守電を間違い電話で受け取る。鍛えてばかりでモテるアレックスをインテリで見た目に自信のないブルーノは見下すが…。
 
恋愛が上手くいかずに悩んでいるの前フリ、ご都合主義が過ぎない偶然の出会い、デート前の服装選び、すれ違いでなかなか素直になれない2人、ほんとうにお決まりをぜんぶやってくれて、それでいてクィアコミュニティの自然な描き方やステレオタイプに囚われないための努力が新鮮で心地よい。
 
メインカップルの接点が途中しばらくなさすぎて最初のケミストリーだけで引っ張るにはだいぶ無理があり、なかなか行動できないせいでだいぶ当て馬を傷つけるのがいたたまれなかった。
 
ブコメはメインカップル以外はほんとうにおまけになりがちなので、家族や親友にマイノリティ設定があっても「そうですか…メインにしないんですか…🫥」となるが、ドラマなので友人のレズビアンカップルやヘテロの子育て中カップルも時間を割いて描かれる。
 
ブコメ映画自体にリスペクトがあり、序盤に『シングル・オール・ザ・ウェイ』を観ているシーンがあったり、いろんなラブコメについて話しているシーンがあったりするのも良い。
 

25. The Holiday Sitter(原題)


Hallmark初のメインカップルがゲイのラブコメ(やっと!)。独身貴族のサム(ジョナサン・ベネット)は、姉夫婦に頼まれ急遽クリスマス前の数日間、甥と姪の面倒をみることに。姉夫婦のご近所さんで部屋の改装に来ていた内装屋のジェイソン(ジョージ・クリッサ)に手伝ってもらっているうちに2人は距離を縮めるが…。
 
いつものすごく軽いB級タッチだが、当て馬もいないし家族のおせっかいやご都合主義もほどほどで、差別的な人は出てこないけど社会の問題にもチラッと触れていて、期待よりとてもバランスが良かった。主人公が姉夫婦や父親とそんなに会っていないんだけど特に仲が悪いわけではなく、困った時は助け合う、くらいの関係なのが良い。ベタベタしてるか険悪かどっちかみたいなこと多いので。
 

26. Acapulco(アカプルコ)S2


メキシコの外国人観光客向けリゾートホテルで働くマキシモエンリケ・アリソン)の友情や恋、家族との関係、仕事に奮闘する姿を描くApple TV+コメディシリーズのシーズン2。どうやら成功して富豪になったが孤独らしい未来のマキシモ(エウヘニオ・デルベス)が甥に過去を語る形で進む。
 
優しくて真面目なマキシモはじめ、鼻につく奴はいてもほんとうに嫌な悪役はおらず皆いい人で、ストーリーもカラフルな色使いもほんとうにかわいい。(キリスト教の母親の拒絶がつらいのだが)レズビアンの妹の恋や母親の中年の恋も描き、その間、主人公はいつになったら本命フリア(カミラ・ペレス)とカップルになれるのだろうとやきもきさせるドタバタもうまい。今シーズンのフィナーレは結婚式だったのだが、キャラクターの結婚を心から祝福したいと思える作品はいい作品だ。いまの癒やし枠。
 
ホテルのプールでいつも英語ポップスのスペイン語カバーを歌っているミュージシャン2人組がおり、かわいいのでぜひサントラを聞いてほしい。
 

27. About Fate(運命の扉)


1976年のソ連映画Ironiya sudby, ili S lyogkim parom!(運命の皮肉、あるいはいい湯を)』のリメイク。大晦日に予定している姉の結婚式直前にキップ(ルイス・タン)にフラれたマーゴット(エマ・ロバーツ)は、酔っ払って家に間違えて入っていたグリフィン(トーマス・マン)に急遽結婚式の同伴を頼む。グリフィンは大晦日に彼女のクレメンタイン(マデライン・ペッチ)にプロポーズする予定だったが…。
 
トーマス・マンのかわいさは良いのだが、物語は何の工夫もなく、マジカルニグロカップルに結婚式には同伴者いなきゃのカップル至上主義に、極めつけはアジア系のルイス・タンのカラテチョップ。頭を抱えた。