Coffee and Contemplation

海外ドラマや映画、使われている音楽のことなど。日本未公開作品も。

今年4-12月に観た(ほぼ)新作ラブコメ27本の感想まとめ

  1. Sempre più bello(ずっと、欲ばりなだけの恋じゃなくて)


Netflixイタリアの"欲ばり"三部作最終章。もはやラブコメより難病メインで2作目と同じ感想としか言えない。なぜ観た私。
 
  1. The Lost City(ザ・ロストシティ)


大物キャストの劇場公開作ということで期待していたが残念ながら全く笑えなかった。サンドラ・ブロックの役が夫を亡くしテンション低め設定なのでせっかくのド派手なシーンもドタバタ感半減、チャニング・テイタムとブラピの対比も中途半端、ダニエル・ラドクリフの悪役も面白ポジションなのに面白みがなかった。
 
現代的な男女のパワーバランス等は比較的とれているが、主人公がロマンス作家とはいえ例によって先人の愛に美しさを見出す流れは本当にいらない。肝心のロマンスもそこまでケミストリーは感じられずチャニングの切ない眼差しで乗り切った感。
 
  1. The Valet(スターは駐車係に恋をする)


これは入れるか迷ったが、ラブコメの外ヅラをして実はラブコメではないというクセモノ。世界的に有名なハリウッド女優のオリヴィアの不倫を隠すため、新しい恋人のフリをする要員として駐車係のアントニオが雇われる。
 
※ネタバレ注意
 
今どき30歳以上離れてるサマラ・ウィーヴィング ×エウヘニオ・デルベス(『コーダ あいのうた』の音楽の先生)の組み合わせって…と最後の方まで心配させておいて、2人は恋仲には全然発展しないのだ。もしそういう展開になったとして抵抗のない作り手だから平気でそういう仄めかしをするのだと思うが、この2人はないだろうと思っている身からすると意地悪以外の何モノでもない上に、誰も大して魅力的に描かれていなくて本当に何がしたいのか分からない。
 
一線は守るとはいえ、20代女性がこんな歳上の見知らぬ男性にベタベタ頼るのは男のファンタジーにとどまっているし、メインの教訓が「白人の金持ちも悪い人ばかりじゃないよ」という感じで薄っぺらい。フランス映画のリメイクらしいがどこまで忠実なのだろうか。
 
良かったのは『Marry Me(マリー・ミー)』の比でないくらいスペイン語の量が多かった点だが、食べ物や文化もそこまでちゃんと見せるわけでもなく、韓国系の家族もおまけのようだった。周りの人をやたらカップルにするのは私の一番嫌いなやつだ。
 
  1. Fire Island(ファイアー・アイランド)

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  1. My Fake Boyfriend(ニセモノ彼氏)


スタントマンのアンドリュー(キーナン・ロンズデール)がまたダメな元彼の元に戻ってしまうことを危惧した親友のジェイク(ディラン・スプラウス)は、フェイク画像でインスタ上にアンドリューのニセモノ彼氏を作る。しかしその存在はアンドリューが新たに出会ったシェフのラフィ(Samer Salem)との距離を縮める障壁となり…。
 
せっかくのキーナン・ロンズデール主演のゲイラブコメなのに、ディラン・スプラウスとサラ・ハイランドの親友カップルはうざいだけだしマジカルアジア人に愛とは何か語らせる雑脚本。ニセモノ彼氏がどんどんインスタ有名人になっていく様子も説得力はない。
 

6. 恋は光

 

ウルトラジャンプ』の同名コミックが原作。「恋をしている女性が光って見える」という特異体質の大学生・西条は、「恋というものを知りたい」という文学少女・東雲に一目ぼれし、恋の定義について語り合う交換日記を始める。西条にずっと片思いしてきた幼なじみの北代と、他人の恋人ばかり好きになってしまう宿木も混じり、四角関係に…。
 
このタイプの邦画は9割方好きではないだろうと予想しながら、評判が良かったので望みが捨てきれない&観た人と話したい&ラブコメ好きとしての使命的なものを感じて観てきてしまった。やはり邦画的な演技演出や、白飛びした化粧で肌のっぺりの映像が苦手だったが、とにかく女の子を可愛く撮ろうという心意気が感じられ、岡山の街並みはきれいでこういうタイプの映画に出てくるとは思わず意表をつかれた。しかしそこを推すなら人がいるショットばかりでなくもっと街の息遣いが見えるようなショットがほしかった。ファッションは日本の大学生ぽくはあったけど、どの子もあんまり好みではなかった。もっとシンプルなのや逆に尖ったのがいい。しかもほかの人も言っていたのだが、ずっとわりと個性のあった北代の服装が、最後だけコンサバな感じになっており、ひたすら首をかしげた。恋する乙女は女らしい服装になる、とかいう理由なのだとしたら嫌すぎる。東雲は家族が全員事故だか病気だかで亡くなっており、おばあちゃんから受け継いだ古民家に住んでおばあちゃんのお下がりのレトロな服を着ているのだが、古風な女性を演出するためのその設定も好きじゃない。私は実際元祖母の家に住んでおり、服もいくつか保存しているが、そんなにきれいな状態で若い人も着れる服はたくさんは残っていない。
 
肝心の本筋のほうだが、まず、理屈っぽい大学生のキャラが定義とか哲学とか言うなら、本気で文学だけじゃなくて先行研究探したりサンプルを集めまくってから語ってほしい。西条は東雲に好意があるとはいえ、本当に真面目に語りたそうな変わったキャラの設定なのに、結局それを理由にコミュニケーションとりたいだけで、議論が浅すぎる。さんざん語った末に恋は厄介だ、とかmessyだ、みたいな結論になるのは別に良いのだが、その過程も稚拙なら高校生くらいの設定で良かったと思う。それかもっと西条や東雲に人間味を持たせて、ただ身近な例を見ながら恋ってなんだろねと悩みながら話してたら深みにハマってしまって文学とかも掘ってみた、くらいの感じにしてほしかった。『ハーフ・オブ・イット』も詩を使うのはいいけどやたら深そうに見せようとするところが好きでなかったんだよな。なので一番共感するというか好きだわーと思ったのは「そうだと思ったものが恋だろ何つべこべ言ってんだ」派の宿木だった。しかし奪うやつは好きじゃない。
 
全員俺のことが好き、みたいな都合良さは男女逆にすると大いにあるパターンだし嫌いじゃないはずだけど、主人公に魅力か人間味がイマイチ感じられないために何チヤホヤされてんだ…となってしまった。大学のほかの男どこ行った。しかも後からあらすじを読んで気づいたが西条は「恋をしている“女性”が光って見える」だけであって、男性は光って見えないのだ。そんな男女二元論な特殊能力があるか。
 
※以下ネタバレ
 
東雲も西条のことを好きになるのだが、西条は東雲への思いは憧れだったと気づき、あなたとは付き合いたいんじゃなくて憧れでした、などと長文の手紙を渡す。憧れも恋の一種だ、みたいな見方はしたいなら勝手にすれば良いが、最初に自分からアプローチしておいて振るのにそのやり方は最低だ。あの人にはそれが誠実な対応なのだみたいのはいらない。
 
女子3人が敵対しないしベタベタもしないのは良かったっちゃ良かったのだが、恋敵なんだから敵対したっていいのではと思った。敵に「辛い」と本音を晒しながら仲良くするなんて無理だ。ちゃんと喧嘩できる人に憧れる。それを「女子って怖い」とかすぐ言わなきゃいいのだ。

7. Fast & Feel Love(原題)


『Heart Attack(フリーランス)』『Happy Old Year(ハッピー・オールド・イヤー)』でハマったタイのナワポン・タムロンラタナリット監督最新作。これも迷うところではあるが、かなりラブコメの流れを踏襲していることは確かなので入れておきたい。
 
スポーツスタッキングに人生をかけるカオ(ナット・キッチャリット)。ある日長年支えてくれた恋人のジェイ(ウッラサヤー・セパーバン)に去られ、生活に四苦八苦する。
 
男性のセルフケアがテーマというには甘いかもしれない。パラサイトやワイスピ、MCUといったポップカルチャーネタが満載で、スポーツモノというにはシュールすぎるコロナ禍のスポーツスタッキング大会や度々入る謎のメタ目線、露骨なほど強くなったコメディ色と、正直カオスなんだが軸にある恋愛の描き方が憎めない。
 
過去に思春期や恋愛モノを撮り、ズバリLoveと入れたちょいダサタイトルの強火コメディって、タイカ・ワイティティと同じでは?!と思った。MCUが好きみたいだし、どの監督が好きか聞いてみたい。
 

8. Mr. Malcolm's List(原題)


’09年の自主出版小説が原作。マルコムさん(ソープ・ディリス)の”結婚相手の条件リスト”に見合うかこっそりテストされ落とされたことに腹を立てたジュリア(ゾウイ・アシュトン)は友人セリーナ(フリーダ・ピントー)に復讐への協力を頼むが…。
 
※ネタバレ注意
 
社交界のゴシップがイラストニュースになって出回る部分などはまさにブリジャートンで、ジェーン・オースティンというよりは二次創作やヤングアダルト小説のような味わい。定石通りセリーナはマルコムさんに気に入られ2人は恋に落ちるわけだが、私はジュリアに肩入れしてしまって彼女が悪者になることに憤慨してしまった。そりゃ一度は復讐に協力すると言っていた友人が自分には優しいからといって手のひらを返すのはつらい。まったくの悪者になるわけではなく救済はあるのだが。
 
マルコムさんがそんなリストを作る理由も「うまくいかなくなることが怖くて人を遠ざけているから」といった感じで寒く、いやただの鼻持ちならないやつじゃん…と思ってしまったので、ソープ・ディリスは良かったのだがそちらより悪者でもジュリアに興味を示してくれるヘンリー(テオ・ジェームズ)が魅力的だった。
 
こんな感じでなんだかんだ入れ込んでいるのでそこそこ楽しんだのだと思うが、家来2人もカップルにする部分は嫌いだった。ラブコメのおまけカップル定番化反対。
 

9. Wedding Season(ウェディング・シーズン)


Netflixの映画のほう。両親からの干渉を止めるために交際を偽装し結婚式シーズンを乗り切ろうとするアシャ(Pallavi Sharda)とラヴィ(Suraj Sharma)だが、次第に本当に惹かれ合い…。
 
主役2人の魅力とテンポの良さでネトフリのラブコメにしてはよくできている感じだったが、えらく無難。移民が主役の作品は嬉しいが結婚観が後戻りすることが多くてきつい。
 
実際に保守的な結婚観の家なんて日本も世界どこでもたくさんいるだろうしそういう現状を描く必要があるのも分かるし、たいていはちゃんとそこに抗う主人公や多様な選択をする人を描いてはいるのだが、私はその先が観たい。
 

10. Badhaai Do(原題)


ゲイの警官Shardul(Rajkummar Rao)とレズビアンの教師Sumi(Bhumi Pednekar)がお互いの社会的体裁を保つために偽装結婚する話。
 
マイノリティの苦悩の物語としては想像の域を出ないし、子作りしてるか見張ろうとまでする家族の干渉や拒絶が本当にキツいが、インド映画でこの設定をやりきれるんだというのは発見だった。感想を漁っていると、LGBTQ+作品は徐々に出てきているが、養子縁組まで踏み込んだのがどうやら画期的らしい。
 
歌って踊る楽しいシーンや大げさBGMのわかりやすい一目惚れシーンもちゃんとあり、ゲイの夫の男尊女卑も浮き彫りにするのが良かった。家族が多すぎてどれがおばさんでどれがお母さんか見分けるのに時間がかかった。
 
Sumiのパートナー役のChum Darangは数々のミスコンを制してるらしくめちゃくちゃ可愛いのだが、インド映画で東アジア系の人見るのは初めてだと思ったら多民族を抱える北東インドの出身だそうだ。
 
『ウェディング・シーズン』もこちらも保守的な親の干渉を止めて平穏に過ごすために偽る話だったが、ヘテロとゲイでは"今描いてほしいのはこれなんだ"という時代感が全然違うことを痛感した。

 

11. Wedding Season(ウェディング・シーズン)

 


「アクションコメディロマンティックスリラー」を謳っていたので観てみたイギリスのドラマシリーズ。Netflix映画とはまったく関係ない。
 
ケイティ(ローザ・サラザール)の結婚式で、新郎とその家族が全員殺される。警察はケイティの愛人ステファン(ギャヴィン・ドレア)を疑い、ステファンはケイティを疑い、ケイティは元夫を疑っているが…。
 
あまり観たことない感じのカオスなテンションで真相が気になるしテンポは良いので最後まで観れたが、ずっとカオスなだけでコメディセンスも恋愛モノとしてのエモーショナルな部分もミステリーの種明かしもそんなに面白くなかった。
 
ファム・ファタルに振り回されるアホだけど人のいい俺、周りが結婚していって寂しい俺でも誠実でいれば運命の女性が現れる、ファム・ファタルも振り回すだけのクールな女じゃなくて混乱してる一人の人間味ある女性、みたいなことがやりたかったのだろうか。
 

12. Top End Wedding(原題)


アボリジニの女優ミランダ・タプセル脚本・主演、『Bohemian Rhapsodyボヘミアン・ラプソディ)』や『The Great(THE GREAT ~エカチェリーナの時々真実の物語~)』のグウィリム・リー共演。彼女の故郷で挙式しようと2人で実家に行くと、母親が家出していたことが判明し…。
 
故郷を離れる葛藤や文化描写は浅かったが、主演2人がかわいく、とことんベタなドタバタをやってくれて楽しかった。こういう時マイノリティなのはいつも女性側な気がする。主人公の親も母親が先住民で父親白人だし。
 
結婚式やハレの日の儀式だけでなく、日常の文化を観たい。先住民のバンドの曲が聴けたのは良かった。
 

13. Meet Cute(ミートキュート ~最高の日を何度でも~)

 

※ネタバレ注意
 
Palm Springs(パーム・スプリングス)』ぶりのタイムループラブコメか?!と思ったら少し違った。思い詰めた主人公シーラ(ケイリー・クオコ)はタイムループにハマってしまったわけではなく、完璧な一日から抜け出したくないがために自らタイムトラベルでわざわざ24時間前を選んで毎日戻っているのだ。
 
その一日とは素敵な男性ギャリー(ピート・デヴィッドソン)との出会いの日。どんなパターンをシーラが選んでも完璧な対応を繰り出すギャリーだが、何回も繰り返していればそりゃ飽きがきたり、完璧ではない部分も見えてくる。それでも次の日には進まず永遠と同じ日繰り返しているシーラの気持ちは分からなくない気もするが、相当な問題を抱えていることがわかる。
 
正直ストーリーとしては消化不良なのだが、メンタルヘルスにここまで向き合おうとしたラブコメはなかなかない。ベタにベタを塗り重ねる作品が多い中、冒険していること自体が嬉しく、こういう実験的なビデオスルー映画あったよなあと懐かしくなる。
 
『About Time(アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜)』では関係を上手くいかせようとタイムトラベルを使える側が一方的に過去を変えまくるのが我慢ならなかったのだが、それは執着だ、おかしいときちんと言ってくれるところもこの映画は好感度が高い。
 
一人でバタバタやっているケイリーもナイーブなピートもいつもの感じで配役の理由は分かるが、ケミストリーがあったかというと疑問だ。ピートはいつもちょっとワルだったり変人要素が足されるが、今回はものすごく良い人で、面白味はあまりなくなってしまった感じだった。
 
既に何回か昨日に戻ってるところから始まるので、2人の本当の最初の出会いは見せてくれないのが不満。
 

14. Maggie(マギー 恋するフォーチュンテラー)


触った相手の未来を見ることができる超能力者のマギー(レベッカ・リッテンハウス)。パーティーで出会ったベン(デヴィッド・デル・リオ)と結婚する将来を予知し彼と一夜を共にするが、その後彼が別の人と結婚する未来を見てしまう。
 
未来が見えてそれがいつも確実だからといって何でもそれに沿って行動したり他人にもそれに従わせるマギーにはイラついたが、ニコール・サクラ演じる親友はじめどのキャラも皆可愛いし、ピート・ウェンツなどの世代ネタが刺さるし、とても軽く見られてかつ割と地に足ついたスキマ時間に最適なドラマシリーズだった。よくある何シーズンもかけて2人はいつくっつくの?(Will they won't they)をやるパターンだっただろうに、思い切りクリフハンガーで終わったままシーズン1でキャンセルされてしまった。
 

15. Rosaline(ロザライン)


ロミオとジュリエットの仲を引き裂こうと画策するロミオの元カノ・ロザライン。テンポよく面白くはあったが、もっとコメディに振り切れて良かった気がする。そもそもラブコメというより嫉妬に駆られた女がどうなるの?!というこれまで観たことのなかった話を勝手に期待してしまったので、都合良くロミオの後釜ダリオが現れ収まるところに収まる王道ラブコメ展開に拍子抜けしてしまった。
 
ロザラインとジュリエットの衣装はぜんぶ可愛く、アホっぽいロミオもテキトーな家来役のニコ・ヒラガも、無駄に脱いだり距離が近かったり自分の役割をやたら心得ているダリオも最高だった。
 
RobynやRoxetteBrandyといったラブコメおなじみ曲をカバーした『Dickinson(ディキンスン)』のDrum & LaceとIan Hultquistによるスコアも注目。もっとロックテイストを加えたりして尖らせても良かったんじゃ?とは思ったが、それだと同じDisney+でリリースされたばかりの『ザ・プリンセス』と近すぎるかもしれない。
 

16. Bros(原題)

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17. Ticket to Paradise(チケット・トゥ・パラダイス)


ジュリア・ロバーツジョージ・クルーニーがはしゃいでいる、ということに特に面白みを見いだせない自分には無だった。ケイトリン・デヴァー演じる娘も婚約者もとにかく記号的。
 

18. 연애 빠진 로맨스(恋愛の抜けたロマンス)


元カレとの別れから恋愛引退を決意したが、寂しいのは嫌なジャヨン(チョン・ジョンソ)。セックスコラムの担当を命じられたライターのウリ(ソン・ソック)。マッチングアプリに登録した2人が最初はまったく期待していなかったが次第に惹かれ合っていき、微妙な関係が始まる。
 
主演2人がとても魅力的で最後まで観れたが、全体的に薄味で、何より男のしたことがかなりアウトだった。
 
ブコメの主人公恋愛コラム書きがち。それが男パターンなのはたまには良いんだけど。
 

19. Falling For Christmas(フォーリング・フォー・クリスマス)


ボーイフレンドからスキー場でプロポーズを受けた直後に崖から落下し、記憶を失った大手ホテル社長令嬢のシエラ(リンジー・ローハン)。ジェイク(コード・オーヴァーストリート)に発見され、彼の小さなロッジを手伝うことになるが…。
 
お決まりのドタバタやほっこりがあって「頭空っぽにして楽しめる」と言いたいところだが、お決まりすぎて何も面白みがなく、進歩もなさすぎてこれは無難とももはや言えない。ジェイクの亡くなった妻とその母、娘がPoCではあるがそれくらい当たり前なのであって、小さい娘が「パパに愛する相手ができるように」サンタに願うという恋愛至上主義や、ギャグキャラと化した婚約者の一瞬のクィア仄めかしが耐え難い。
 
リンジー・ローハンが復帰したという事実以外は何も残らなかった。
 

20. Christmas with You(クリスマス・ウィズ・ユー)


落ち目のラテン系ポップ歌手アンジェリーナ(エイミー・ガルシア)は、曲作りから逃げて自分の大ファンだという少女に会いにいく。大雪で戻れなくなり、少女の父親の教師ミゲル(フレディ・プリンゼ・Jr)の家で彼と一緒に作曲することに。
 
『Marry Me(マリー・ミー)』と『Music and Lyrics(ラブソングができるまで)』をまんま組み合わせたみたいな怠惰な作り。めちゃくちゃスペイン語をしゃべっていて、ラテン文化をrepresentしようという意気込みは今年のほかのどの作品より感じられた。JLoにはとても勝てないが、エイミー・ガルシアはスター感がとても板についてたと思う。『She's All That(シーズ・オール・ザット)』ぶりに見たフレディ・プリンゼ・Jrはただの良い人っぽすぎて、それが好感度高くもあり、弱点でもあるという感じ。
 

21. Your Christmas or Mine?(あなたの、私のクリスマス?)


学生カップルのジェームズ(エイサ・バターフィールド)とヘイリー(コーラ・カーク)は、どちらも相手を驚かそうとしたために、クリスマスをそれぞれの相手の実家で過ごすことになる。
 
期待はしてなかったけどやっぱり何も面白くなかった。他人の家を勝手に飾り付け始める図々しいだけのヘイリーはじめ、ジェームズにセクハラまがいのことをするヘイリーの姉など登場人物が誰も魅力的じゃない。ネタバレとかもう知らんが、犬を誤って傷つけるシーンがあって、生きてました良かったねー!オチなのが酷い。ダニエル・面白・メイズの無駄遣い。エイサ・バターフィールドはいい加減作品を選ぼう。
 

22. Something from Tiffany's(ティファニーの贈り物)


恋人にプロポーズしようとティファニーで指輪を買った作家のイーサン(ケンドリック・サンプソン)。しかし手違いで同じくティファニーで買い物をしたゲイリー(レイ・ニコルソン)が持っていたイヤリングと入れ替わってしまう。指輪を取り戻そうとゲイリーの恋人でパン屋のレイチェル(ゾーイ・ドゥイッチ)に接触するが…。
 
※ネタバレ注意
 
レイチェルが指輪をイーサンに返すときに、黙ってパンの中に仕込む意味がわからない。イーサンがレイチェルの仕事の予定も聞かないで「好きなら○時までにここに来て」とメッセージする意味もわからない。ご都合主義が許容範囲を超えた。ラブコメっぽい流れをとりあえず入れればいいわけではない。
 

23. Croce e delizia(泣いたり笑ったり)


金持ちの美術商トニと、漁師・魚屋のカルロが同性婚すると宣言したことから始まる2家族の騒動。
 
劇中良いものとしては描いてないのだが、私には家族の干渉がキツすぎた。過去に色々あったとして、差別思考だったとして、親の再婚が気に食わないなら大人なら黙って距離置きなよと思ってしまった。その点プロットの出発点がほぼ同じであるNetflixドラマの『Grace & Frankie(グレイス&フランキー)』のほうが2人の男性の関係を壊そうとする人はいなかったのでだいぶ心地良かったが、長年連れ添ったそれぞれの妻を傷つけるという点においては、妻は離婚しているか亡くなっているこちらのほうが安堵した。いずれにせよ、誰かを傷つけたり反発する人がいないとドラマは生まれないのだろうか。
 

24. Smiley(スマイリー)


バルセロナが舞台のNetflixドラマ。ゲイバーで働くアレックスは元カレに怒りの留守電を残したつもりが、建築家のブルーノがその留守電を間違い電話で受け取る。鍛えてばかりでモテるアレックスをインテリで見た目に自信のないブルーノは見下すが…。
 
恋愛が上手くいかずに悩んでいるの前フリ、ご都合主義が過ぎない偶然の出会い、デート前の服装選び、すれ違いでなかなか素直になれない2人、ほんとうにお決まりをぜんぶやってくれて、それでいてクィアコミュニティの自然な描き方やステレオタイプに囚われないための努力が新鮮で心地よい。
 
メインカップルの接点が途中しばらくなさすぎて最初のケミストリーだけで引っ張るにはだいぶ無理があり、なかなか行動できないせいでだいぶ当て馬を傷つけるのがいたたまれなかった。
 
ブコメはメインカップル以外はほんとうにおまけになりがちなので、家族や親友にマイノリティ設定があっても「そうですか…メインにしないんですか…🫥」となるが、ドラマなので友人のレズビアンカップルやヘテロの子育て中カップルも時間を割いて描かれる。
 
ブコメ映画自体にリスペクトがあり、序盤に『シングル・オール・ザ・ウェイ』を観ているシーンがあったり、いろんなラブコメについて話しているシーンがあったりするのも良い。
 

25. The Holiday Sitter(原題)


Hallmark初のメインカップルがゲイのラブコメ(やっと!)。独身貴族のサム(ジョナサン・ベネット)は、姉夫婦に頼まれ急遽クリスマス前の数日間、甥と姪の面倒をみることに。姉夫婦のご近所さんで部屋の改装に来ていた内装屋のジェイソン(ジョージ・クリッサ)に手伝ってもらっているうちに2人は距離を縮めるが…。
 
いつものすごく軽いB級タッチだが、当て馬もいないし家族のおせっかいやご都合主義もほどほどで、差別的な人は出てこないけど社会の問題にもチラッと触れていて、期待よりとてもバランスが良かった。主人公が姉夫婦や父親とそんなに会っていないんだけど特に仲が悪いわけではなく、困った時は助け合う、くらいの関係なのが良い。ベタベタしてるか険悪かどっちかみたいなこと多いので。
 

26. Acapulco(アカプルコ)S2


メキシコの外国人観光客向けリゾートホテルで働くマキシモエンリケ・アリソン)の友情や恋、家族との関係、仕事に奮闘する姿を描くApple TV+コメディシリーズのシーズン2。どうやら成功して富豪になったが孤独らしい未来のマキシモ(エウヘニオ・デルベス)が甥に過去を語る形で進む。
 
優しくて真面目なマキシモはじめ、鼻につく奴はいてもほんとうに嫌な悪役はおらず皆いい人で、ストーリーもカラフルな色使いもほんとうにかわいい。(キリスト教の母親の拒絶がつらいのだが)レズビアンの妹の恋や母親の中年の恋も描き、その間、主人公はいつになったら本命フリア(カミラ・ペレス)とカップルになれるのだろうとやきもきさせるドタバタもうまい。今シーズンのフィナーレは結婚式だったのだが、キャラクターの結婚を心から祝福したいと思える作品はいい作品だ。いまの癒やし枠。
 
ホテルのプールでいつも英語ポップスのスペイン語カバーを歌っているミュージシャン2人組がおり、かわいいのでぜひサントラを聞いてほしい。
 

27. About Fate(運命の扉)


1976年のソ連映画Ironiya sudby, ili S lyogkim parom!(運命の皮肉、あるいはいい湯を)』のリメイク。大晦日に予定している姉の結婚式直前にキップ(ルイス・タン)にフラれたマーゴット(エマ・ロバーツ)は、酔っ払って家に間違えて入っていたグリフィン(トーマス・マン)に急遽結婚式の同伴を頼む。グリフィンは大晦日に彼女のクレメンタイン(マデライン・ペッチ)にプロポーズする予定だったが…。
 
トーマス・マンのかわいさは良いのだが、物語は何の工夫もなく、マジカルニグロカップルに結婚式には同伴者いなきゃのカップル至上主義に、極めつけはアジア系のルイス・タンのカラテチョップ。頭を抱えた。
 

ゲイラブコメ『Bros』について調べたこと

オールLGBTQキャスト(一部カメオを除く)でジャド・アパトープロデュースのゲイラブコメが作られるというニュースを見てからずっと楽しみにしていた映画『Bros』。先にディズニープラス・米Huluで配信された『Fire Island(ファイアー・アイランド)』もとても丁寧なつくりで大好きだけど、『Bros』にはこれまでになく共感してしまい、生涯ベストに入るくらい大事な作品となった。

 

自分に自信を持ち、おかしいことはおかしいと声を上げることを常に憚らず、それを抑えつけられそうになっても絶対に引き下がらない主人公。そんな彼に劣等感や鬱陶しさを感じながらも刺激を受け、次第に変わっていくロマンスの相手。マイノリティが"声高に主張すること"を全力で肯定してくれて、何も図々しくない、主張しなきゃいけない社会がおかしいと何度も肩を叩いてくれるような優しさが全編に貫かれているのだ。何かと物を言っては「気にしすぎ」「怖い」などと言われてきた自分には、その姿勢を優しく肯定してくれ、ロールモデルを示してくれたようだった。

 

この作品をより理解したくて、キャストや監督のインタビューの類を片っ端から読み・聞き・観漁り、劇中出てくるポップカルチャーネタやLGBTQ+の歴史上の人物・出来事についてたくさん調べたので、せっかくなので元々知っていたものも改めてまとめてリストにした。調べきれなかったものも多々あるし、より正確を期するために随時更新していきたい。

 

 

あらすじ

ニューヨークに新しくできる国立LGBTQ+歴史博物館の立ち上げに携わるボビー。アプリで出会った人とカジュアルに肉体関係を持っては友人たちと楽しくおしゃべりを繰り返す毎日だったが、新しいゲイ向け出会い系アプリのローンチパーティで弁護士のアーロンと出会う。お互い真剣交際はしないたちだった二人はぎこちないながらも段々と距離を縮めていき…。

 

キャスト

 

Billy Eichner(ビリー・アイクナー)/Bobby Lieber(ボビー・リーバー)

ニューヨーク出身のコメディアン・俳優。ポール・ラッドクリス・エヴァンス、ミシェル・オバマなどセレブゲストと共にNYの街を駆け巡り道行く人々に唐突に声をかける番組『Billy on the Street』が有名。レズビアンたちを引き連れ「Let's Go Lesbians, Let's Go!」と叫びながら走る場面はネットミームになった。シットコム『Parks and Recreation』ではシーズン6から登場し、シーズン7でレギュラーに昇格。Apple TV+『Dickinson(デイキンスン)』ではエミリー・ディキンスンのスー・ギルバートへの愛を再確認させるゲイの詩人ウォルト・ウィットマン役。音楽はマライア・キャリーやマドンナが好き。好きなラブコメは『When Harry Met Sally(恋人たちの予感)』、『Moonstruck(月の輝く夜に)』など。

 

『Bros』タイトルの元になったという『Billy on the Street』のエピソード(feat.ジェイソン・サダイキス)↓

 

Luke Macfarlane(ルーク・マクファーレン)/Aaron Shepherd(アーロン・シェパード)

カナダ出身。ニューヨークのジュリアード音楽院で演劇を学ぶ。ドラマ『Brothers & Sisters(ブラザーズ&シスターズ)』(2006-2011年)ではマシュー・リース演じるケヴィンの相手役スコッティーを演じ、劇中で結婚した。その最中の2008年にゲイであることをカミングアウト。Netflixで2021年に配信されたゲイラブコメ『Single All The Way(シングル・オール・ザ・ウェイ)』では主人公のデート相手のジムインストラクターを演じた。『Bros』劇中で度々揶揄される「Hallheart Channel」の元ネタ「Hallmark Channel」(後述)のオリジナル映画13本に出演し、そのすべてで女性の恋の相手役を演じている。役柄同様カントリー音楽、特にガース・ブルックスが好き。木工大工が趣味で友人に手作りのベビーベッドやドアをプレゼントしている。好きなラブコメは『Pretty Woman(プリティ・ウーマン)』(倫理的な危うさにもちゃんと言及)。

 

Guy Branum(ガイ・ブレイナム)/Henry(ヘンリー)

ゲイ向け出会い系アプリ「ゼルウィガー」を運営するボビーの友人役。コメディアン・俳優・脚本家。ミンディ・カリング製作・主演のラブコメドラマ『The Mindy Project』に脚本家・俳優として参加。そのほか『No Strings Attached(抱きたいカンケイ)』などさまざまな作品に出演。

 

Dot-Marie Jones(ドット・マリー・ジョーンズ)/Cherry(チェリー)

ボビーが働くLGBTQ+博物館のメンバー役。役柄同様当人はオープンリーレズビアン。元アスリートで腕相撲世界チャンピオン。ドラマ『GleeGlee/グリー)』ではトランス男性のコーチ・ビーストを演じた。

 

Jim Rash(ジム・ラッシュ)/Robert(ロバート)

ボビーが働くLGBTQ+博物館のメンバー役。ドラマ『Community(コミカレ!)』ではセクシャリティについて特定のラベルを持たない校長を演じた。

 

Ts Madison(Ts・マディソン)/Angela(アンジェラ)

ボビーが働くLGBTQ+博物館のメンバー役。映画『ZolaZola ゾラ)』などに出演。黒人トランス女性として初めて自身のリアリティ番組を制作。

 

Miss Lawrence(ミス・ローレンス)/Wanda(ワンダ)

ボビーが働くLGBTQ+博物館のメンバー役。ジェンダーノンコンフォーミングの俳優・歌手。映画『The United States vs. Billie Holiday(ザ・ユナイテッド・ステイツ vs. ビリー・ホリデイ)』、ドラマ『EmpireEmpire 成功の代償)』などに出演。

 

Eve Lindley(イヴ・リンドリー)/Tamara(タマラ)

ボビーが働くLGBTQ+博物館のメンバー役。映画『After Yang(アフター・ヤン)』、ドラマ『Mr.Robot(MR. ROBOT/ミスター・ロボット)』などに出演。ドラマ『Dispatches from Elsewhere(別世界からのメッセージ)』ではメインキャラクターの1人で美術館勤務のトランス女性シモーンを演じた。

 

Monica Raymund(モニカ・レイムンド)/Tina(ティナ)

男女カップルで子どもを育てているボビーの友人役。バイセクシャルであることをカミングアウトしている。ドラマ『The Good Wife(グッド・ワイフ)』、『Chicago Fire(シカゴ・ファイア)』などに出演。

 

Guillermo Diaz(ギレルモ・ディアス)/Edgar(エドガー)

男女カップルで子どもを育てているボビーの友人役。ゲイであることをカミングアウトしている。『Law & Order(ロー&オーダー)』、『ER(ER緊急救命室)』、『Girls(GIRLS/ガールズ)』など多数のドラマに出演。2013年の『Out』誌の「影響力のあるゲイ、レズビアンバイセクシャルトランスジェンダーの人々100人」に選ばれた。

 

Peter Kim(ピーター・キム)/Peter(ピーター)

ボビーの友人の1人を演じる。『The Forty-Year-Old Version(40歳の解釈: ラダの場合)』などに出演。

 

Justin Covington(ジャスティン・コヴィントン)/Paul(ポール)

コメディアン・俳優。Netflixのオムニバスシリーズ『Easy(イージー)』などに出演。

 

Symone(シモーン)/Marty(マーティ)

ボビーの友人の1人を演じる。『RuPaul's Drag Race(ル・ポールのドラァグ・レース)』シーズン13で優勝したドラァグクイーンとして有名。

 

Jai Rodriguez(ジェイ・ロドリゲス)/Jason Shepard(ジェイソン・シェパード)

妻と離婚したばかりのアーロンの兄役。『Queer Eye』(※後述)の初代メンバーで、カルチャーガイドを担当した。『Grey's Anatomy(グレイズ・アナトミー)』や『Dollface(ドールフェイス)』など数々のドラマに出演。

 

Amanda Bearse(アマンダ・ビアース)/Anne Shepard(アン・シェパード)

小学校2年生を教える教師・アーロンの母役。シットコム『Married... with Children』(1987-1997年)のマーシー役で有名。1993年にレズビアンであることをカミングアウトし、プライムタイム番組出演俳優で最初期にカミングアウトした1人となった。

 

Harvey Fierstein(ハーヴェイ・フィアースティン)/Lewis(ルイス)

プロヴィンスタウンでボビーとアーロンを迎え入れる宿主。俳優、プロデューサー、劇作家。『Torch Song Trilogy(トーチソング・トリロジー)』(演劇版・映画版)『Hairspray』(ミュージカル)など数々のアイコニックな作品に出演。自身のアイデンティティについて「たくさん考えたけどまだ困惑している」と語っている。

 

Bowen Yang(ボウエン・ヤン)/Lawrence Grape(ローレンス・グレイプ)

ボビーがLGBTQ+博物館への出資を頼みに行く大物TVプロデューサー役。人気スケッチ番組『Saturday Night Live(サタデー・ナイト・ライブ)』初の中国系アメリカ人、3人目のオープンリーゲイ男性レギュラーとなった。『Isn't It Romantic(ロマンチックじゃない?)』、『The Lost City(ザ・ロストシティ)』、『Fire Island(ファイアー・アイランド)』などラブコメにも多数出演。

 

Debra Messing(デブラ・メッシング)/本人役

シットコム『Will & Grace(ふたりは友達? ウィル&グレイス)』(1998-2006年、2017-2020年)でゲイのウィルの親友グレイス役を長年演じた。

 

スタッフ

 

Dr. Eric Cervini(エリック・セルヴィーニ博士)

『Bros』のLGBTQ+の歴史監修を務めた歴史学者。著書『The Deviant's War: The Homosexual vs. The United States of America』がピューリッツァー賞のファイナリストになった。

 

LGBTQ+歴史博物館の展示

 

Stonewall riots(ストーンウォールの反乱)

LGBTQ+当事者が初めて警察に抵抗し暴動になった1969年の事件。誰が最初にレンガを投げたのかどうかは長年の議論の的となっているが、抵抗運動を率いたのはトランス女性のマーシャ・P・ジョンソンやシルヴィア・レヴェラだとボビーが紹介する。

 

Khnumhotep and Niankhkhnum(カーヌムホテップとニアンカーカーヌム)

「Bert and Ernie of Ancient Egypt(古代エジプトのバートとアーニー)」とボビーが言及する。紀元前2400年頃の古代エジプト王室に仕えた人物で、鼻同士を近づける描写などから歴史上で記録が残された最も古い同性カップルだという説がある。

 

Nancy Cardenas(ナンシー・カルデナス)

俳優・詩人・作家・フェミニスト。1974年に39歳で、メキシコで初めてレズビアンであることを公言した。同年メキシコで初の同性愛者組織「Frente de Liberación Homosexual(同性愛者解放運動)」を設立。同性愛者の権利を保護するマニフェストを作成し、1978年には初のゲイプライドマーチを率いた。※写真のみ

 

Alan Turing(アラン・チューリング

イギリスの数学者。暗号解読で連合軍のナチス打倒に貢献した。1952年に19歳のArnold Murray(アーノルド・マレイ)との関係を告発され、逮捕されて転向療法としてホルモン治療を受けた。1954年に41歳で自殺したとされる。2013年に恩赦を受けた。※写真のみ

 

Leonardo Da Vinci(レオナルド・ダ・ヴィンチ

バイセクシャルだったかもしれないと言及がある。「サライ=(小悪魔)」という名前で知られていた弟子の1人ジャン・ジャコモ・カプロッティをことのほか愛して側に置いたと言われている。

 

Eleanor Roosevelt(エレノア・ルーズベルト

アメリカ合衆国第32代大統領夫人。レズビアンの記者ロレーナ・ヒコックと親密な手紙をやり取りしていたことから、性的指向についても長年研究者の間で議論されてきた。

 

Harvey Milk(ハーヴェイ・ミルク

1977年、アメリカ初のオープンリーゲイの議員としてカリフォルニア州サンフランシスコ市の市会議員に当選した。議員就任1年も経たない1978年にジョージ・マスコーニ市長とともに同市庁舎内で射殺され、犯人のダン・ホワイトはわずか7年の禁固刑となった。この評決に怒った同性愛者らが、サンフランシスコで広範囲にわたる暴動「Whit Night riots(白い夜の暴動)」を起こした。

 

James Baldwin(ジェームズ・ボールドウィン

アメリカの作家・公民権運動家。作品内で多くのアフリカ系アメリカ人やゲイ、バイセクシャルの人物を扱った。ドキュメンタリー映画『I Am Not Your Negro(私はあなたのニグロではない)』はボールドウィンの未完の原稿を元に作られた。映画『If Beale Street Could Talk(ビール・ストリートの恋人たち)』原作者。マーティン・ルーサー・キング・ジュニアとも公民権運動を行ったが、同性愛を精神疾患だと考えていたキングはオープンリーゲイであったボールドウィンから離れていき、ボールドウィンは運動組織から外された。

 

Bayard Rustin(バイヤード・ラスティン)

マーティン・ルーサー・キング・ジュニアの右腕として1963年のワシントン大行進を率いた。公民権運動だけでなくオープンリーゲイであったことから何度も逮捕された。バラク・オバマ米大統領ミシェル夫人の製作会社ハイヤー・グラウンドがNetflixと組んでプロデュースする初の劇映画『Rustin』(2023年公開予定)ではColeman Domingo(コールマン・ドミンゴ)がラスティンを演じる。

 

Abraham Lincolnエイブラハム・リンカーン)のゲイ・バイセクシャル

ビジネスパートナーのJoshua Fry Speed(ジョシュア・フライ・スピード)と親しい仲で、4年間一つのベッドをシェアしたため、リンカーンはゲイまたはバイセクシャル等であったのではないかと度々議論されている。当時は同性同士でベッドをシェアすることは珍しくなかったが、そこまでの長い期間はなかなかなかったらしい。妻の不在時に共に寝たと言われるボディガードのDavid Derickson(デヴィッド・デリクソン)との関係も議論の的となっている。

 

Pete Buttigieg(ピート・ブティジェッジ

同性愛を公言した初の民主党大統領候補。ジョー・バイデン政権で同国運輸長官を務める。

 

キンゼイ指標(Kinsey Scale)

アメリカの性科学者・昆虫学者アルフレッド・キンゼイ博士が考案した人間の異性愛と同性愛の指向を示す7段階の指標。博士が1948年と1953年に発表した「Kinsey Reports(キンゼイ報告)」では、ほとんどの人はある程度両性愛的傾向を持つと述べている。リーアム・ニーソン主演の伝記映画『Kinsey(愛についてのキンゼイレポート)』(2004年)はルーク・マクファーレンが博士の息子役で出演した映画デビュー作。

 

Liberace(リベラーチェ)

世界的人気を博したピアニスト。1987年にエイズで死去。生前カミングアウトすることはなかったが、友人のベティ・ホワイトが2011年のインタビューで彼はゲイであり、度々自分はカモフラージュに使われたと語っている。※言葉での言及のみ

 

その他

 

Martina Navratilova(マルティナ・ナヴラティロヴァ)

チェコスロバキア出身のアメリカのテニス選手。ボビーが彼女についての絵本を作ったことがあるとポッドキャストで話す場面がある。現在はレズビアンだと公言している。

 

Queer Eye(クィア・アイ)

Netflixの人気番組。それぞれヘアメイク、ファッション、インテリア、料理など得意分野を持つ5人が一般人のメイクオーバーを行う。ボビーが『クィア・アイ』メンバーになるオーディションを受けるシーンがある。アーロンの兄役ジェイ・ロドリゲスは2003年にケーブル局Bravoで放送されたオリジナル版のメンバー。

 

Colton Underwood(コルトン・アンダーウッド)

ボビーが出席する「LGBTQ+ Pride Awards」授賞式で、「Out Athlete of the Year」を受賞したNFL選手が尊敬する人として挙げる。元NFL選手で、引退後の2019年に結婚相手を探すリアリティ番組『The Bachelor』に出演。2021年にゲイであることをカミングアウトし、そのプロセスを追ったNetflix番組『Coming Out Colton(コルトン・アンダーウッドのカミングアウト)』が配信された。

 

Hallheart Channel

グリーティングカード会社が運営するメロドラマチャンネル「Hallmark Channel」のもじり。『Full Houseフルハウス)』のキャンディス・キャメロン・ブレやチャド・マイケル・マーレイが御用達俳優となっている。『Bros』の中では近年急にゲイやバイセクシャルやポリアモリーのクリスマス映画を作り出したと揶揄されているが、実際のHallmarkは今年12月放送のジョナサン・ベネット主演『The Holiday Sitter』がゲイキャラクターがメインの初の作品となる。

 

南北戦争におけるLGBTQ+

南北戦争で戦った400人のレズビアン」にチェリーが言及し、アンジェラが「その中にはトランス男性もいた」と話す場面がある。実際には北軍だけでも800人の女性兵士がおり、南軍には250人いたと推測されている。兵士たちの実際のアイデンティティを知ることは難しいが、一部の兵士は戦後も男性として生きた記録がある。

 

Bisexual Awareness Week

GLAADとBiNet USAによって制定されたものは毎年9月16–23日。劇中では6月に「今週はBisexual Awareness Weekだ」とロバートが話す。

 

Lesbian History Month

3月だったとチェリーが言及する場面がある(この名称での開催確認できず)。

 

Katherine Lee Bates(キャサリン・リー・ベイツ)

愛国歌「America the Beautiful」の作詞で知られる詩人・作家・学者。「ヴァージニア州の彼女の家に行くと、詞を書いたナプキンがある」とチェリーが言及する場面がある。同居していた社会運動家のKatharine Coman(キャサリン・コーマン)とはレズビアンカップルだったとの説がある。

 

Schitt's Creek(シッツ・クリーク)

カナダのコメディドラマ。オープンリーゲイのダン・レヴィ演じるゲイキャラクターのデヴィッドは劇中で結婚式を挙げた。ボビーが似ていると言われるユージン・レヴィはダンの父親。

 

Cher(シェール)

ゲイ・アイコンとして多くの人に崇められる歌手・俳優。アーロンの元を訪れた相談者が遺産を全額シェールに残したいと言い出す。ドラァグクイーンをステージパフォーマーとして雇い一般的にしたアーティストの1人と言われ、映画『Silkwood(シルクウッド)』ではレズビアンの人物を演じた。トランスジェンダーの息子がいる。

 

Michael Scott/The Office(マイケル・スコット/ジ・オフィス)

英国のドラマをリメイクしたアメリカの人気職場コメディ。マイケル・スコットはスティーヴ・カレルが演じる主人公。アーロンからメールで「踊っているマイケル・スコットのGIF」を送られたボビーは「ジ・オフィス?!こいつ本当にゲイか?!」と反応する。

 

Evan Hansen(エヴァン・ハンセン)

ミュージカル、のちに映画になった『Dear Evan Hansen(ディア・エヴァン・ハンセン)』の主人公。内気で、自死した同級生の両親に息子と仲が良い友達だったと勘違いされ話を合わせてしまう。劇中では同級生の女子に恋をするが、オープンリーゲイのベン・プラットが演じている。ボビーがアーロンとの最初のデートで自分を卑下し「僕はエヴァン・ハンセンのその後みたいだ」というシーンがある。

 

The Hangover(ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い

2009年のヒット映画。ブラッドリー・クーパー演じるフィルがエド・ヘルムズ演じるスチュアートを「Dr. Faggot(ホモ先生)」と呼ぶ場面があり、ボビーが批判する。

 

The Treasure Inside

ボビーとアーロンが最初のデートで映画館に観に行く劇中劇。「ストレートの俳優が賞を獲るためにゲイの役を演じる悲劇的な作品」をボビーが散々揶揄した直後に観に行く。『Brokeback Mountain(ブロークバック・マウンテン)』や『The Power of the Dog(パワー・オブ・ザ・ドッグ)』のパロディと思われる。リアム・ヘムズワースとニック・ジョナスで実際のシーンを撮ろうとしていたがコロナの影響で断念。

 

Elphaba Thropp(エルファバ・スロップ)

ミュージカル『Wicked』の「西の悪い魔女」。

 

GleeGlee/グリー)

高校の合唱部を舞台にした学園ドラマ。ゲイやレズビアンバイセクシャルトランスジェンダーのキャラクターが登場した。

 

Doja Cat

ラッパー・歌手。LGBTQ+歴史博物館のファンドレイジングパーティーで名前が言及される。歌詞中でバイセクシャリティを仄めかしている。

 

It's Always Sunny in Philadelphiaフィラデルフィアは今日も晴れ)

2005年から続くご長寿シットコム。Rob McElhenney(ロブ・マケルヘニー)演じるメインキャラクターの1人マックがシーズン12で初めてゲイであることをカミングアウトする。

 

Viola Davis of Tufts

※このジョークはよくわからなかったのでわかった方がいたらぜひ教えてください

 

Lemonade

Beyonceのアルバム名。

 

Caitlyn Jenner(ケイトリン・ジェンナー)

陸上・十種競技の元世界記録保持者で、1976年モントリオールオリンピックの金メダリスト。弁護士ロバート・カーダシアンの元妻であるクリス・ジェンナーと1991年に結婚し、ケンダルとカイリーをもうけた。2007-2021年まで、カーダシアン家とジェンナー家のリアリティ番組『Keeping Up with the Kardashians(カーダシアン家のお騒がせセレブライフ)』に出演。2015年にトランス女性であることを公表。世界で最も有名なトランス女性と呼ばれ、トランスジェンダーの人々のための人権活動を行ってきた。しかし共和党員であることや、トランス女性の女性スポーツ参加に反対したことなどから、多くのLGBTQ+活動家から批判されている。『Bros』ではタマラがジェンナーを「テロリスト」と呼ぶシーンがある。

 

Ozark(オザークへようこそ)

ジェイソン・ベイトマン、ジュリア・ガーナーらが出演するNetflixの人気ドラマ。ボビーがアーロンへの連絡を我慢しようと一人で料理している場面で「Don't call him 〜just watch Ozark 〜 like a normal person〜」と口ずさむ。

 

Austin Powers(オースティン・パワーズ

毛深い人の例えとして言及される。

 

Provincetown(プロヴィンスタウン)

マサチューセッツ州の小さな海岸リゾート。自由な雰囲気からLGBTQ+コミュニティのバケーションの地としても知られる。映画監督のジョン・ウォーターズが住んでいる。

 

Lil Nas X

ラッパー。カントリー歌手のBilly Ray Cyrus(ビリー・レイ・サイラス)をフィーチャーした『Old Town Road』が全米歴代最長の19週連続No.1ヒット。その最中にゲイであることをカミングアウトした。黒人の囚人たちが刑務所内のシャワーで裸で踊るシーンが話題となった『INDUSTRY BABY』のMVでは、ピンクの囚人服を着た囚人たちがダンベルトレーニングをする場面もある。『Bros』でボウエン・ヤン演じるTVプロデューサーがLGBTQ+博物館の展示内容のアイデアを出した際、「ゲイトラウマアトラクション」の最後に現れるハッピーなシーンとして「ピンクのダンベルでトレーニングしているLil Nas X」を提案する。

 

A Sex Positive Tiny Tim

※このネタはよくわからなかったのでわかった方がいたらぜひ教えてください

 

Rachael Ray(レイチェル・レイ)

人気セレブシェフ。

 

Leslie Jordan(レスリー・ジョーダン)

『Will & Grace(ふたりは友達? ウィル&グレイス)』ビヴァリー・レスリー役などで知られるコメディアン・俳優。オープンリーゲイで、エイズ危機の初期には非営利団体の患者支援活動に携わった。『Bros』ではHallheart Channelの架空の映画として紹介された『Miracle on 34th Street but with One Gay Guy』のポスターに登場。2022年10月24日に交通事故で亡くなった。

 

Sarah Paulson(サラ・ポールソン

自身のセクシャリティについて「Fluid」と語っている。女性とオープンに交際していることからレズビアンアイコンとして多くの人に崇められている。『Bros』ではHallheart Channelの架空の映画として『Home Alone but with Sarah Paulson』が紹介される。

 

1976 Dyke March

レズビアンのデモ。ボビーがアーロンの家族にニューヨークを案内する際、1976年のDyke Marchのコースを教えたとアーロンが言及する。

 

Yentl(愛しのイエンテル)

バーブラ・ストライサンド監督・主演の映画。ポーランドに暮らすユダヤ人女性イエンテルは、女性が学ぶことを許されていなかった「タルムード(ユダヤ教の主要教派の多くが聖典として認める文書群)」を学ぶために男装をする。ボビーがジムでマッチョな男性をナンパする際わざと低い声を使ったことを同作に例える。

 

Silence=Death Triangle

エイズ危機の際に意識向上のために立ち上げられた「Silence=Death(沈黙は死) Project」のポスターにちなんでいる。ピンクの三角形は、同性愛者を表す記号としてナチス強制収容所のバッジでは逆三角形で用いられていた。

 

Tirami-Susan

人気ドラマ『Friends(フレンズ)』に登場するレズビアンキャラクター・スーザンにちなんでいる。

高慢と偏見マラソン8作+1

  1. Pride & Prejudice(プライドと偏見、2005年)

 

 

『ファイアー・アイランド』が『高慢と偏見』をベースにしているというので、あんまり覚えてないな…と2005年のジョー・ライト版を再見。キーラ・ナイトレイの勝ち気なエリザベスも、マシュー・マクファディンのダーシーさんのキラキラした切ない眼差しも完璧だ。二人の心の動きがコンパクトな中にも一番うまく描かれていると思う。ロザムンド・パイクキャリー・マリガン、タルラ・ライリー、ジェナ・マローンのベネット姉妹は今観ると一層豪華で楽しい。

 

  1. Fire Island(ファイアー・アイランド、2022年)

 

コメディアンのジョエル・キム・ブースター脚本・主演。遊び人で読書家、看護師の主人公ノア(エリザベス)と親友のハウイー(ボウエン・ヤン、ジェーン)、ルーク(マット・ロジャーズ、リディア)、キーガン(トマス・マトス、キティ)は毎年恒例のファイアー・アイランドへのバケーションに出かける。マーガレット・チョーが旅先の宿主兼皆のお母さん的存在(=ベネット夫人)だ。

 

旅先で一行よりずっと高級な別荘に泊まっているのがチャーリー(ジェームズ・スカリー)と友人で医師のウィル(コンラッド・リカモラ)とクーパー(ニック・アダムス、キャロライン)。ウィッカムさんにあたるデックス(ゼイン・フィリップス)も登場する。

 

最初からジェーン・オースティンの名前を出してリスペクトを入れつつ、でも「ヘテロ規範強すぎるよね〜」とツッコむのも忘れないところ、そして全編通してゲイキャラクターばかりで皆楽しそうにしているのが最高だ。無理に保守的な部分(母親が娘全員をとにかく結婚させようとするとか)を踏襲せず、うまく現代に落とし込んでいる。それでいて、ダーシーさんはちゃんと雨にも打たれてくれる(小説を読んでないので雨に打たれるシーンが元々あるのか知らないけど)。こちらのダーシーさんも、仏頂面とコミカルなところ、デレデレするところちゃんと全部やってくれるので、今のところマシュー・マクファディンと共にダーシーさん選手権同率一位を併走(?)している。

 

おとなしめで恋愛に積極的になれないハウイーとノアの友情も大変かわいい。ルークとキーガンがただのアホな兄弟でなく、ちょっと騒がしくてやらかしがちだけど対等な友人になっているのもとても好きなポイントだ。あとブリトニーの曲の使い方が正しい。

 

 

  1. Pride and Prejudice and Zombies(高慢と偏見とゾンビ、2016年)

 

友人とウォッチパーティーで観るのにこれほど最適な映画があっただろうか。(いや、ある。その名をバーフバリという)もっとゾンビを取り入れるのに合わせてストーリーを変えてもよかったんじゃ?!と思うほど高慢と偏見だった。姉妹が勇ましく武器を取り出す度に皆で「キター!!!」と爆笑した。私は先に紹介した2作を観た直後だったので比べてその忠実さに笑ったが、『高慢と偏見』初見の友人たちもそもそものプロットに大盛り上がりだった。

 

リリー・ジェームズのエリザベスはさすが可愛いし強いし大変良いのだが、個人的にはこのダーシーさん(サム・ライリー)はずっと仏頂面すぎる。堅いなりに情熱を見せてほしいのだ。チャールズ・ダンス(ベネット父)やレナ・ヘディ(キャサリン夫人)も出してくるあたり、いかにも『ダウントン・アビー』と『ゲーム・オブ・スローンズ』が流行っている時代に作ったなという感じがする。しかし、マット・スミス演じるコリンズさんのクセが強すぎてその他全員を食っていたと思う。

 

あと、中国とか日本で修行したという下りは全然いらなかったと思う。日本刀使いこなせてない。

 

  1. Bride and Prejudice(原題、2004年)

 

 

ボリウッド版があると聞いて観ないわけにはいかない。ラリータ・バクシ(Lalita Bakshi、エリザベス)を演じるのはインドのスター、アイシュワリヤー・ラーイで、1994年のミス・ワールドに選ばれたらしい。アメリカ人のダーシーさんを演じるのはマーティン・ヘンダーソン(『グレイズ・アナトミー』のネイサン)で、ビングリーさんはナヴィーン・アンドリュース(『LOST』のサイード)演じるバルラジュ・アッパル(Balraj Uppal)というキャラになっている。ウィッカムさんは『ヴァンパイア・ダイアリーズ』のイライジャ(ダニエル・ギリーズ)で、なぜかイギリス人設定だ。

 

バクシ姉妹がダーシーさんとビングリーさんとその妹Kiran(『ゲーム・オブ・スローンズ』のインディラ・ヴァルマ)に出会うのは知人の結婚式で、いきなり男女に分かれてダンスバトル(なんか花いちもんめみたいな感じで挑発し合う)が始まり爆笑した。もちろんダーシーさんは踊らないのだが、バルラジュはノリノリでセンターに入り「インドのMCハマーよ」と妹に言わせる。

 

ダーシーさんはホテルグループの御曹司という設定で、インドにホテルを買収しに来ている。そこでラリータが、インドで地元民と交わらず高級ホテルだけで過ごす金持ちを揶揄するというのはなかなか上手いと思った。ダーシーさんがラリータと一緒に地元民との交流を深め、ラリータに惹かれていく流れがすぐ見える。しかしやはりアメリカ人だからなのか、このダーシーさんは最初から笑顔を見せすぎる。高慢な感じは十分あるが、ダーシーさんにはツンツン仏頂面をしていてほしいのだ。

 

こちらのコリンズさん(ニティン・ガナトラ)もなかなかクセが強く、アメリカに移住した彼とシャーロットの結婚式で、バクシ家御一行はダーシーさんたちに再会する。嬉しいサプライズは、ダーシーの妹ジョージナ役がアレクシス・ブレデルだったことだ。このキャスティングをしたからにはエリザベスに懐くだけの可愛いジョージナでは済まないだろう、と勝手に思っていたら、ちょっとだがちゃんと重要な役割を与えられていた。

 

とにかく歌と踊りがそこかしこに入り、Ashantiも出てくるわ、アメリカパートではラテン系のミュージシャントリオやゴスペル隊も出てくるわやりたい放題だ。踊って大団円、高慢と偏見にピッタリでないか。

 

  1. Pride and Prejudice(高慢と偏見、1995年)

 

初見のBBCドラマ版。ダーシーさんといえばコリン・ファース、という印象が強かったためハードルを上げすぎたかもしれないが、こちらもずっと仏頂面すぎて緩急がなく、エリザベスとどこでお互い好きになったのかあまりはっきりしない。6話もあるが他の映画より話が濃かった気はあまりしない。たまにフラッシュバックが説明的に入るのがテレビっぽいなと思った。

 

しかしこれぞ基本、という感じで安定感があったし『ブリジット・ジョーンズの日記』の源泉を観られてよかったのと、伝説のびしょ濡れダーシーがEalingで撮られたことを知って嬉しくなった。

 

  1. Pride and Prejudice(高慢と偏見、1940年)

 

先日『キャスティング・ディレクター ハリウッドの顔を変えた女性』を観たばかりなので、当時のキャスティングではやっぱりスタジオ付きの一番旬な俳優をメインに持ってきたのかな〜などと考えた。ローレンス・オリヴィエのダーシーさんはメイクなのか少女漫画っぽい風貌で、全体的にスクリューボールコメディっぽいのに引っ張られてわりと明るい感じになっている。ベネット母が娘たちをとにかく結婚させたがるのはいつものことだが、シャーロット家と馬車で競争までするなどかなりのコメディ感があった。

 

他の作品ではいつもただひたすら嫌な奴だったキャサリン夫人に粋なツイストが加えられていたり、さらにエンディングはベネット母が主人公だったのでは?!と思わせるくらいになっていたり、あれこれアレンジされている。

 

  1. Pride & Prejudice: Atlanta(原題、2019年)

 

アトランタの黒人コミュニティを舞台にした現代版。かなりそのままで戸惑うが、お父さんを牧師にすることで結婚観などが保守的なことの説明にしている感じだ。いつも思うが、Lifetimeチャンネルの恋愛モノはなぜ歴史的建物や商店街の保存を絡めてくるのか(笑)。開発反対運動に勤しむエリザベス(ティファニー・ハインズ)に対してダーシーさん(フアン・アントニオ)を議員候補にするというのは上手いが。このダーシーさんはニヤニヤしていてやっぱり仏頂面が足りない(笑)。

 

大きく変えている点といえば、ジェーン(レイニー・ブランチ)が子持ちの未亡人になっていることくらいか。ダーシーとかビングリーとか名前はそのままなのに終始"Yaaaass!! Girrrl!!!"みたいなノリなのも可笑しかった。

 

  1. Pride & Prejudice: A Latter-Day Comedy(原題、2003年)

 

白人だらけの現代版。こちらは無理してそのままにせず、姉妹を友人&ルームメイトに、両親やシャーロットを省略するなど工夫している。キャストはラスベガスの牧師役のジャレッド・ヘス(『オースティンランド 恋するテーマパーク』監督の夫)くらいしか知らなかったのだが、00年代のB級青春映画感がめちゃくちゃよく出ている。音楽もものすごくそれっぽいのだが、Shazam!しても一曲も引っかからなかった(笑)。

 

エリザベス(キャム・へスキン)は作家志望の書店員で、アルゼンチン人のルームメイト・ジェーン(ルシーラ・ソラ)は世話を焼いてエリザベスの原稿を片っ端から出版社に送っている。その中で唯一原稿に反応した出版社の経営者が、書店でエリザベスに失礼な態度を取ったウィル(オーランド・シール)だった。そこまでは良いのだが、ウィルにちょっと赤入れされただけで「私の小説はもう何度も書き直したのに」とキレるエリザベスは作家としてダメだと思う。エリザベスはブロンドで眉の細いいかにも当時の美人なのだがどうも私のイメージとは合わない。ウィルはなんだか良い人そうな顔立ちでこちらもちょっとイメージと違う。

 

リディア(ケリー・ステイブルズ)とジャック・ウィッカム(ヘンリー・マグワイア)が駆け落ちする先がラスベガスなのはいかにも。チャールズ(ベン・グーリー)がだいぶおかしな仕事をしており、後にその設定がちゃんと生かされるので「そのためかよ!」とちょっと笑った。コリンズさんがだいぶ嫌な奴だったのでメアリーとくっつけるなやと思ってしまった。

 

※番外編 Austenland(オースティンランド 恋するテーマパーク、2013年)

 

 

高慢と偏見』の物語をほぼそのまま踏襲した作品だけをピックアップしようと思っていたが(それだけでも本当はまだだいぶある)、これだけは今回加えておきたい。

 

主人公はジェーン・オースティンの大ファンで特にコリン・ファース版ダーシー様が大好きなアメリカ人のジェーン(ケリー・ラッセル)。三十路にもなってと反対されながら、夢だったオースティンの世界を疑似体験できるイギリスでの休暇プランに大枚をはたいて参加する。他の参加者は同じく女性のお一人様2人(ジェニファー・クーリッジ、ジョージア・キング)で、コスプレして男性役者にもてなされる感じがホストクラブごっこみたいでだいぶキツい…と序盤は思っていたら、ごっこの外側を見せる辺りから先が読めなくなりかなり面白くなってくる。そんな都合のいいファンタジーに浸ってると危ないよ、という警笛と、でもやっぱファンタジーいいよね!という祝福を同時にやってのけているのだ。

 

ダーシーさん的役割を務めるのはJJ・フィールド(『ターン・アップ・チャーリー』)で、彼はジェーンのどこが良いのかは全然わからないのだが、仏頂面がとても板についていて大変良い。何より私得なのは、最初にジェーンと良い感じになる雑用係的マルチ役者のマーティン役がFlight of the Conchordsのブレット・マッケンジーであること。ずっととぼけた姿しか見てこなかった彼がちゃんとlove interestを演じているところを見られただけでもう感無量だ。しかもそれだけではなく、ちゃんといつもの姿も見せてくれる。

 

極めつけは、エンディングクレジットのNellyだろう。とにかく観てほしい。

 

『シャドウ・イン・クラウド』を観て母性とフェミニズムについて考えた話

※もう記事タイトルでネタバレしているようなものだけど、気になる方は観てからどうぞ

 

クロエ・グレース・モレッツ主演のニュージーランド映画『Shadow in the Cloud(シャドウ・イン・クラウド)』を観た。予告編から明かされているが、クロエが空中で日本軍やモンスター(グレムリン)と戦う話だ。評判が良く、フェミニスト映画としても持て囃されていたので気になった。

 

実際に「ウソでしょ?!」とツッコみたくなるような大胆な戦闘シーンがいくつかあり楽しんだ部分もあったのだが、私はこの作品をフェミニスト映画とは呼びたくない。そしてそんな感想を話したら、かなりの反発を受けた。この作品のフェミニズム的側面を認めない私はおかしいのだろうか? 私が持った違和感を持つ人はほかにもいるようなのに、なぜその点はこんなに軽視されるのだろうか? とかなり考え込むことになったので、ちゃんともう少しインプットした上で文章にしたいと思った。

 

 

 

極端にミソジニスティックな言葉を浴びせまくる

 

クロエ演じるモード・ギャレットは、機密物資を運ぶためと言ってオークランドからサモアに向かう軍機に乗り込む。男性のみのクルーたちは突然現れた彼女を舐めた態度を取り、機体下部の銃塔に押し込めた彼女に聞こえていないと思い込んだまま「あれはヤレる」みたいなかなり過激なミソジニー発言をけっこうな時間続ける。モードが聞こえていることをさらっと伝えると彼らは笑ってごまかす。これはもう映画としての好みだし、女性軍人が実際に言われてきたことだと言われればそうですかとしか言いようがないが、この描写は単純に古い。

 

機密鞄の中身、なぜそれにした

 

モードは攻撃してきた日本軍機を撃墜するが、機体の外にモンスターを目撃し、そのことを必死でクルーに伝える。彼らはなかなか信じず、モードの身元と機体の不調を怪しんだ機長の命令で、機密鞄を開けて中身を見てしまう。中には赤ん坊が入っていた。

 

モードは夫からひどい虐待を受けており、そんな中で関係を持ったクルーの一人ウォルター・クエイド(彼だけは唯一モードに親切だった)との間に子どもを授かっていた。子どもの存在はクエイドにも知らせておらず、夫から逃れるために任務を装って乗り込んできたのだ。子どもには看護師か誰かに頼んで鎮静剤を打ってもらったという(!)。

 

この鞄の中身が判明した時点で、私の中ではかなりこの作品への期待が消え失せた。これまで古さはあれど、世の中のどんな組織より男社会であろう軍の中で頑張る強い女性軍人を描くのだと思っていた。女性の強さが戦争に利用されるというシチュエーションな時点でかなり危ういものがあるが、メインの相手はモンスターみたいだし、と思っていたら、これは“母性神話”だったのだ。

 

その後、モードは何が何でも赤ん坊を守り、臆せずモンスターと戦う超人と化す。男たちの頼りなさが強調され、ひたすら「母、強し」なままなんの躊躇もなく最後までストーリーが進む。

 

「母性神話」の影響の軽視

 

私が一番引っかかったのは、こんなに「ザ・母性神話」な話が、なぜフェミニスト作品として持て囃されるのかということだ。この展開は、この作品のほかのフェミニズム的要素を無に帰すようなものではないのか。フェミニズムは母性神話を丁寧に解体してきたのではなかったか。それとも世の中はまだかなりの母性主義なのか。そこの自信がなかったために、「母の超人的な強さみたいなものも女性のエンパワメントの一つなのでは、フェミニズムと対立しないのでは」(うろ覚えです)と言われて咄嗟に返せなかった。「母の強さ」を描くことに反発を覚える自分は「母の敵」なのだろうかとまで悩んだ。

 

しかしやはり、「母性を強さとして描くこと」=「母性があれば超人的に強くなれると描くこと」ではない。子どもができたことで、「この子を守るためなら何でもできる」と今までなかった力を感じる人はいるだろう。それを作中唯一の女性に背負わせることが表象として有害なのだ。

 

「母性」は生まれながらにして女性全員に備わっているものではないし、子どもが生まれたら自動的に身につくものではないし、母は皆超人ではない。そのような言説や表現は散々女性を苦しめてきた。それがなぜここでは見逃される、または軽視されるのだろうか。

 

最近では、Netflixアニメ『The Mitchells vs. the Machines(ミッチェル家とマシンの反乱)』でも、母親のキャラクターが息子のピンチに急に超人化するという描写があった。同じNetflixの『The Lost Daughter(ロスト・ドーター)』のような母性に疑問を呈する作品がまだまだ「タブーに切り込んだ」と評されるくらいなのだから、私の見通しが甘いのかもしれない。

 

これについて考えていたとき、Apple TV+のドラマ『Pachinko パチンコ』の第6話を観た。主人公の一人スンジャの自宅での出産シーンで、あまり親しくなかった近所のおばちゃんが「あんまりうるさいもんだから手伝いに来たよ!」と出産を手助けする。ああ、私が見たい母の強さ、連帯とはこういうものだと思った。

 

母になった人の経験やそれにもとづいて獲得した強さは存在するし、また実社会で母親が置かれる立場は父親とも違うので、一口に「親」としてそこを透明化するのも違う。

 

私は子どもがいるいない関係なくただ強い女性の話がもっと観たいし、母としての経験にエンパワメントされる女性の話も、悩む女性の話ももっと観たい。

 

最後のシーンについて

 

『シャドウ・イン・クラウド』では最後にモードがまるで聖母のように赤ん坊に授乳するシーンがある。私がそれを「サービスショット」だと書いたことについても反論されたが、これはこの作品を「フェミニスト映画」と捉えられているか否かに尽きると思う。

 

私だって授乳シーンでかなりの露出があるからといってすべてのそういうシーンに反発するわけではない。むしろ文脈によってはエンパワメントにすらなり得る描写だと思う。この映画では、残念ながら「こういうのを入れとけばフェミニズムになるんでしょ」と勘違いで(あるいは本気で母性主義を信じて)放り込まれた母性神話を利用したサービスショットにしか見えなかったという話だ。

 

脚本家への告発について

 

一応言及しておくと、この映画の脚本にクレジットされているマックス・ランディスは、複数の女性から性的暴行を告発されている。ランディスはプロデューサーから外され、ロザンヌ・リャン監督が脚本のリライトを行ったが、脚本のクレジットからはランディスは外せなかったという。

 

最終的にどこまでが彼の仕事なのかわからないので、そういう人の脚本をもとに映画を作ったことの是非自体は置いておく(最初の告発が2017年、クロエ・グレース・モレッツの出演が発表されたのが2019年なので、止める・イチから練り直すことはできたのではとは思う)。その上で、ここでは最終的なアウトプットのみを批判している。

 

 

そういえば、女性ばかりのアクション映画『The 355355)』でペネロペ・クルスが演じた役は、メイン5人の女性の中で唯一子どもがいて、唯一いわゆる戦闘能力を持たない人だったなと思い出した。あれはあれで「守るものがいると弱い」みたいで、最終的には彼女も銃を持たされてはいたけれど、どうしてこう極端なのだと思う。5人も多様な女が出ている作品でこそ、母の強さも存分に描けるのに。(当たり前だが、武力だけが強さだと言っているわけではない)

 

母性についてフェミニズムの中での捉え方を掘り下げたいと思い読んでいる『母性の抑圧と抵抗』(元橋利恵著、晃洋書房)はかなり面白い。戦略的母性主義という言葉を知れてとても良かったと思う。

 

2022年1-3月に観た新作ラブコメ8本の感想まとめ

1.Book of Love(原題)
 

 
サム・クラフリン演じるロマンス小説家ヘンリーの作品がメキシコでなぜか大ヒット。トークイベントツアーのために現地へ出向くと、ヒットの理由は翻訳家マリア(ベロニカ・エチェーギ)が勝手に内容を大幅にエロティックに改変したためだと判明し…
 
これは設定から嫌な予感がしていたけど、やっぱりそこでつまづいた。翻訳者が人の小説を勝手に改変して悪びれもせず、「自分がぜんぶ書いたのに男の手柄にされる」とフェミニズム的文脈に持ってこうとする雑さ。せめて元の小説が父権的でムカついたからとか別の理由を入れるか、売れるために出来心で微変更した、くらいにしてほしかった。
 
実際は「愛はそんな物じゃない」とただ違う価値観にムカついて作家の人間性をジャッジしているだけで、当の作家も質をバカにされたことにばかり怒っている。これはそれ以前の問題だ。改変後の小説の良さも、「情熱的」と言うばかりでどこがそんなに良いのかわからない。
 
ヘンリーのキャラが薄く、真面目そうで全体的にボンヤリという設定なのか、謎のおっちょこちょいシーンがちょくちょく入る。ボトムスを履き忘れるとか、ものすごい変顔でライムを食べるとか。でもそこはサム・クラフリン、マリアに惚れる瞬間はハッとするような切ない表情も見せてはくれる。
 
メキシコの人たちは、こんなただ“情熱的な人々”みたいな雑な描き方をされて良いんだろうか。
 
ブコメーター(仮称)>>
共感度★☆☆☆☆
キュンキュン度★★☆☆☆
ドタバタ度★★☆☆☆
定石通り度★★★☆☆
ご都合主義ほど良さ度★☆☆☆☆
オシャレ度★★☆☆☆
カルチャーネタ満載度★☆☆☆☆
 
2.The Royal Treatment(ロイヤル・トリートメント)
 

 
『アラジン』のメナ・マスードが架空の国ラヴァニアの王子トーマス、ディズニー・チャンネル出身のローラ・マラーノが小さな美容室の経営者イジーを演じる。アメリカ人の婚約者に会いに来たトーマスは、従者が高級美容室と間違えてブッキングしたイジーを気に入り、ラヴァニアでの結婚式のスタイリングも依頼する。
 
せっかく美容師という設定なのに特にヘアスタイルにもファッションにもワクワクしないし、整合性のない謎コントが多すぎてほかが頭に入らなかった。
 
ブコメーター(仮称)>>
共感度★☆☆☆☆
キュンキュン度★★☆☆☆
ドタバタ度★★☆☆☆
定石通り度★★★☆☆
ご都合主義ほど良さ度★☆☆☆☆
オシャレ度★☆☆☆☆
カルチャーネタ満載度★☆☆☆☆
 
3.I Want You Back(恋人を取り戻すには)
 

 
予期せぬ妊娠をするコメディアンを演じた『Obvious Child(原題)』がとても良かったジェニー・スレイトの新作。脚本は『Love, サイモン 17歳の告白』の2人、監督はピート・デヴィッドソンの主演映画『Big TIme Adolescence(原題)』と彼のコメディスペシャルを撮っているジェイソン・オーリー。
 
ジェニー演じるエマとピーター(チャーリー・デイ)はそれぞれのパートナー(スコット・イーストウッドジーナ・デイヴィス)にフラれた直後にたまたま出会い、ヨリを戻すために協力し始める。
 
年齢的に地に足ついた感じだけどドタバタもちゃんとあって、久々の安心感のある脚本だった。それぞれの元カレ・元カノの新しい相手にClark Backoとマニー・ジャシントも出てきて、合計6人分のラブコメ演技を観れるお得感。それだけいてぜんぶヘテロかよとは思ったけど。あと、美味しいスイーツ屋のシーンをわざわざ出しておいてスイーツをアップで映さないのは罪だ。
 
なぜかラブコメにチョイ役率の高いピート・デヴィッドソンは今回ももちろん変な役で登板。あとThe O.C.のベン・マッケンジーがすっかり中年の役で出てきてびっくりした。
 
どうでもいいけど、序盤に出てきた子ども部屋のようなところに『フリー・ウィリー2』のポスターが貼ってあった(Boyz II Menと98 DegreesとSalt 'N Pepaもあった)ことと、エマが『ボーイ・ミーツ・ワールド』を観てたことに一番テンションが上がってしまった。
 
ブコメーター(仮称)>>
共感度★★★★☆
キュンキュン度★★★☆☆
ドタバタ度★★★☆☆
定石通り度★★★★☆
ご都合主義ほど良さ度★★★★☆
オシャレ度★★★☆☆
カルチャーネタ満載度★★★☆☆
 
4.Marry Me(マリー・ミー)
 

 
なぜこのタイミングでこの設定なのか謎すぎるジェニファー・ロペス×オーウェン・ウィルソンの古風な格差ラブコメ。婚約者バスチアン(マルマ)と大スター同士ライブステージ上で結婚する予定だったキャットは、彼の浮気動画を直前に見てしまい、観客のチャーリーに咄嗟にプロポーズする。
 
予告編から想像するもの以上でも以下でもなかったけど、強引過ぎて何の説得力もないのにあるかのように錯覚させるストーリーと(ここまでは褒めてない)、シスター姿のダンサーたちと踊りながらChurch,Church,Church♪と連発するだけの曲の景気の良さに爆笑してしまった。
 
せっかくスペイン語をけっこう使っているのにマルマは今回悪役で、結局相手は白人というのがだいぶ残念。これまでのJLoのラブコメもぜんぶそうだ。しかもオーウェン・ウィルソンとは全然ケミストリーがない。
 
ブコメーター(仮称)>>
共感度★★☆☆☆
キュンキュン度★☆☆☆☆
ドタバタ度★★★★☆
定石通り度★★★★☆
ご都合主義ほど良さ度★★☆☆☆
オシャレ度★★☆☆☆
カルチャーネタ満載度★★☆☆☆
 
5.10 Truths About Love(原題)
 

 
Tubi(アメリカ版Gyao!みたいな広告付き無料配信サービス)初のオリジナルラブコメ。恋愛コラムニストのカリーナ(カミーラ・ベル)は自分の恋愛について書いているが、予期せずフラれてしまい…。
 
何のひねりもなくトンチキな楽しさもなく、主人公は可愛いが好きになれない。恋愛コラムを書いてるからといって自身の恋愛がうまくいくわけじゃない、なんて気づきをメインにもってくるな。
 
主人公がブラジル系で、両親とちょくちょくポルトガル語を使っていた。特にそれ以外大した文化を見せるわけでもなくさりげなさすぎるが、最近こうやって登場人物のバックグラウンドを見せる作品はよくありその傾向自体は良いと思う。
 
ブコメーター(仮称)>>
共感度★☆☆☆☆
キュンキュン度★★☆☆☆
ドタバタ度★☆☆☆☆
定石通り度★★★★☆
ご都合主義ほど良さ度★★★☆☆
オシャレ度★★☆☆☆
カルチャーネタ満載度★☆☆☆☆
 
6.Moonshot(原題)
 

 
『好きだった君へのラブレター』シリーズのラナ・コンドール×『リバーデイル』のコール・スプラウスのSFラブコメ。火星にも人が住んでいる未来、火星に行くことに憧れているが何度も選考から漏れている普通の大学生でバリスタ・アシスタントのウォルトは、火星のボーイフレンドの元に行くことにした優秀な理系大学生のソフィーに便乗して火星行きの宇宙船に忍び込む。
 
予告編からあんまり期待していなかったけど、案の定だめだった。ウォルトがウザくて好きになれないし、2人にまったくケミストリーがない。ソフィーを含む頭の良い研究者やエンジニアたちに対してウォルトがいかに“ふつうの人”かが何度も強調されるのに、ほかに違う良いところがあるわけでもなく、そのふつうさが良いんだ!みたいな雑な方向に持っていくだけでとても感じが悪い。
 
安っぽいCGばかりの映像と衣装で2人の魅力も引き出されず、可愛い瞬間はあるけれど、ピーター・カヴィンスキー助けに来てー!!と思いながらずっと観ていた(『好きだった君へのラブレター』参照)。宇宙ビジネスの実業家としてザック・ブラフが出てくるのだが、なんだか彼が演じる役として何の意外性もなく、コメディ的に面白い瞬間もなかった。
 
ブコメーター(仮称)>>
共感度★☆☆☆☆
キュンキュン度★★☆☆☆
ドタバタ度★★★☆☆
定石通り度★★★☆☆
ご都合主義ほど良さ度★★☆☆☆
オシャレ度★☆☆☆☆
カルチャーネタ満載度★☆☆☆☆
 
7.Starstruck(原題)シーズン2
 

 
ニュージーランド出身のローズ・マタフェオ脚本・主演、ロンドンが舞台の1シーズン6話のドラマ。映画館でバイトするジェシーはドラマ版『フォー・ウェディング』のニケシュ・パテル演じる大物俳優トムとたまたま一夜を共にする。その後お互い相手が気になるのになかなかくっつけない、古き良きスクリューボールコメディ。
 
主人公の親しみやすい可愛さときれいに撮れているHackneyの住宅街の魅力、テンポの良さで飽きずにビンジできるものの、会話が軽快でウマが合う以外はお互いの良さはあまり出ておらず正直ケミストリーは足りない。音楽に頼りすぎ感もある。
 
シーズン2は、シーズン1の土壇場無茶ハッピーエンド後の現実を時間を使って描く。勢いで相手を選んだはいいけどこれからいろんなことどうするの、というドタバタの中で嘘バレや海外出張話、池ダイブとお決まりのオンパレードは楽しい。でも主人公が成長したようで特にしておらず、やっぱちょっと説得力に欠けるなと思った。そしてシーズン2から登場のラッセル・トーヴィーの出番が足りない。
 
ブコメーター(仮称)>>
共感度★★☆☆☆
キュンキュン度★★☆☆☆
ドタバタ度★★★★☆
定石通り度★★★★☆
ご都合主義ほど良さ度★★★☆☆
オシャレ度★★★☆☆
カルチャーネタ満載度★★☆☆☆
 
8.Our Flag Means Death(邦題追加:海賊になった貴族)
 

 
デヴィッド・ジェンキンス企画・脚本、タイカ・ワイティティ出演・一部監督の10話のドラマ。予告編やポスターを見ただけではそうと分からないのでこれがラブコメだと言うこと自体がある種ネタバレかもしれないが、作者もハッキリ"Historical pirate rom-com"と言っている。(気にしない人だけ続きをどうぞ)
 
主人公は"The Gentleman Pirate"と呼ばれた実在の海賊スティード・ボネット(リース・ダービー)。貴族の生活を捨てて海賊船の船長となった彼は、野蛮な海賊たちにビビりながらも何とか彼らに順応しようとする一方で、字の読めない彼らに物語を読み聞かせたりする。いわゆる有害な男らしさの解体の話なんだな、と1話くらいの時点では思う。
 
話が進むと、ノンバイナリーの海賊がいることがわかったり(作中でその言葉は出ないけどインタビュー等で明言しており役者も当事者)、海賊同士でカジュアルに色目を使ったりイチャイチャしているシーンが出てくる。そして、ワイティティ演じる伝説の海賊"Blackbeard"ことエドワード・ティーチ(こちらも実在)とスティードがどんどん距離を縮めていくのがわかる。これはれっきとしたクィアブコメなのだ。
 
gayやqueerの文字もromantic comedyの文字も説明に含まずただコメディとして売り出していることは、他の作品だったら不親切・不誠実に感じたかもしれない。しかしこの作品はこれまでごまんとあったクィアベイト的作品ではなく、好意も接触もはっきり見せる。そこには、本来クィアなはずの海賊たちの物語を取り戻す意味合いもある。
 
これだけ良い意味で裏切られた作品は久しぶりで、『インベスティゲーション』で殺人事件の容疑者が登場するのをまだかまだかと待ち構えていたら出なかった時を思い出した。テーマの似ている『テッド・ラッソ』に求めていたことの一部をもっとずっとうまくやってくれた気もする。
 
フレッド・アーミセンやレズリー・ジョーンズ、ニック・クロールといったコメディアン勢ぞろいのキャスト陣を見てもわかるように、基本的にはめちゃくちゃゆるい。しかし簡単にはハッピーにさせてくれない。シーズン2が待ち遠しい。
 
ブコメーター(仮称)>>
共感度★★★★☆
キュンキュン度★★★★★
ドタバタ度★★★★☆
定石通り度★★★☆☆
ご都合主義ほど良さ度★★★★☆
オシャレ度★★★☆☆
カルチャーネタ満載度★★★☆☆
 

ここ一年ちょっとくらいで観た(ほぼ)新作ラブコメ17本の感想まとめ

  1. Happiest Season(ハピエスト・ホリデー 私たちのカミングアウト)

クリスマスに一緒に帰省してと恋人のハーパー(マッケンジーデイビス)に頼まれてついて来たアビー(クリステン・スチュワート)だったが、ハーパーは家族にまだレズビアンであることを話していないことが発覚、田舎の保守的なハーパーの家族からマイクロどころでないアグレッションを受け続ける…。
 
夢かってくらいめちゃくちゃ可愛いカップルなのに、ハーパーの家族がキツすぎる上にハーパーからもあまり守ってもらえないアビーが可哀そうすぎて、とてもすんなりは受け入れられなかった問題作。ハーパーのどこがいいんだアビー!!ライリー(オーブリー・プラザ)に乗り換えろ!!と思ったのは私だけではないはず。
 
でも後から振り返ると、やはり一流キャストに一流クルーの演技や撮影の安定感が半端ない。そして監督クレア・デュバルの物語だったんだな、「これは私の物語だ」と思える人がほかにもいるんだなといろいろな人の感想を観て気づくと、この作品が作られて良かったなと思う。
 
ジョン(ダニエル・レヴィ)がいわゆる都合の良いG.B.F.(ゲイ・ベスト・フレンド)だったのは、ゲイとレズビアンだって連帯するんだぞ〜!!というメッセージでしょう。
 
  1. The Broken Hearts Gallery(ブロークン・ハート・ギャラリー)

売出し中のジェラルディン・ヴィスワナサン×『Stranger Things(ストレンジャー・シングス)』のデイカー・モンゴメリー。ジェラルディン演じるルーシーが天真爛漫系なのに対してデイカー演じるニックはふつうにいい人すぎて、お調子者のニックの親友マルコス(アルトゥーロ・カストロ)の方が既婚者だけどもしかしたら相性いいのではと思ってしまった。
 
恋人未満状態だけど躊躇いなくめちゃくちゃ仲良くする2人の可愛さがハイライトなだけに、プロットが雑でところどころcheesyすぎて入り込めなかったのがもったいない。意識する素振りすら見せないところから一気に関係が進むので、もう少し丁寧にやってほしかった。
 
そしてそもそも論になってしまうけど、ルーシーが企画する表題のブロークン・ハート・ギャラリー(過去の交際の遺物を集めたギャラリー)という発想がダサい。
 
頼もしい主人公の親友役は『Booksmart(ブックスマート)』のモリー・ゴードンと『Hamilton(ハミルトン)』のフィリッパ・スー。自分を傷つけた男に対して敵意むき出しになってくれる友達は最高だ。それ以上の人格は描かれないけれど。
 
 3. 街の上で
 

 
下北沢の古着屋で働く青(若葉竜也)。狭い行動範囲の中に行きつけのカフェや飲み屋や古本屋があって、いろんなタイプの女の子とそれぞれ違う人生の交わり方をして、飄々としてるからものすごいドラマがあるわけではないように見えると思っていたらラブコメ的爆笑クライマックスに収束する。
 
わざとインディーっぽい(?)演技はあまり得意じゃないけど、今年のラブコメでは一番面白かった。自分の街でもこんな映画を作ってくれたらいいのにと思いながら、あと英語字幕を想像しながら観た。今泉力哉監督作品もっと観ます。
 
  1. 7 Days(原題)

ジェイ&マーク・デュプラス兄弟プロデュース(マークは声だけちょっと出演)、ジェラルディン・ヴィスワナサンもプロデュース・主演。コロナを劇中の世界に反映させたラブコメは初めて観た。
 
親がセッティングした初デート直後に外出禁止令が出て交通もストップし、しばらく家に一緒にいるはめになったインド系のリタ(ジェラルディン・ヴィスワナサン)とラヴィ(カラン・ソニ)。撮影はほぼ家の中のみというミニマムなセッティングで、すぐにお互いだいぶ価値観が違うことが分かりリタは終始スウェットだしダラけ放題、ラヴィもただのいい人で、ときめきもコメディも足らなくてダレてしまった。
 
2人の価値観の違いはそのままで解決していないし、最初と最後クレジット後に出てくる実際の何組かのインド系カップルの馴れ初め話も往年のラブコメオマージュという以外に何が言いたいのかよくわからなかった。人間皆いろいろ違うけどコロナで人のありがたみを実感した、みたいなことか?それだったらもっとスピーディに遠隔だけで作ってロックダウン中に出すとかのほうが良かったんじゃ。
 
中途半端にボリウッドしか観たことない話とかをラヴィがするんだけど、いやそこはその後2人でボリウッド作品を一緒に観てリタも何コレ面白い!!てなるかハリウッド作品を一緒に観てラヴィが興奮する場面いるでしょ!!回収せい!!と思ってしまった。
 
似た設定では大雪で一夜の相手が二夜泊まる羽目になるマイルズ・テラー主演の『Two Night Stand(きみといた2日間)』のほうが好き。
 
  1. Breaking Fast(原題)

『Eternals(エターナルズ)』でファストスのパートナー役だったハーズ・スレイマン主演。ムスリムでゲイのモーは、ラマダン(日の出から日没まで食事を断ち、性的な欲なども断つ)に入る直前にカル(マイケル・キャシディ)と出会い、毎日イフタール(日中の断食を終えて食べる夕食)を一緒に作るように。
 
王子様的スマイルで積極アタックしてくるカルにドギマギする主人公の王道感とラマダンのシチュエーションとの組み合わせが巧い。いつも作る食事がとても美味しそうなので、もっとちゃんと映して解説してくれたらよかったのにと思う。信仰の敬虔度合いやセクシャリティの多様性は『Ramy(ラミー 自分探しの旅)』や『We Are Lady Parts』で観ていたのでこれが初めてではなかったけど、ほかにもあると知れてよかった。
 
しかしメイン2人の演技がとにかく棒でキツかった。2人ともちょこちょこ他作品にも出ている人なのに、cheesyすぎるセリフと演出のせいだろうか。ハーズ・スレイマンも、インスタとかを見るとめちゃくちゃセクシーでかっこいい人なのに、この作品では真面目な役のせいかスタイリングかいまいち魅力が出ていなかったように思う。
 
せっかくPoC(Person of Color、有色人種)が主人公なのに相手役が“ホットな白人”である必要はないという指摘もあり、確かにそうだなあとも思った。親の都合でエジプトに住んでいたことがあってアラビア語も話せるホットな白人とか都合良すぎるっちゃあ良すぎる。それで元から理解や関心があるから近づいてくるとも言えるけど。
 
  1. まともじゃないのは君も一緒

メイン2人が高校生と予備校講師(年齢不詳だがおそらく20代前半〜半ば)という時点で詰んでたのだけど評判が良くて観てしまった。
 
ストーカーチックになりヒヤヒヤドタバタ劇を繰り広げる王道展開には心躍る。しかし各自のキャラが表面的で、成田凌演じる康臣のおかしな時と急に流暢に話す時の都合が良すぎる。清原果耶演じる香住が同級生の親のスナック的なところで酔っ払ってないけど酔っ払いのようになってるときの演技はうるさくてきつかった。。
 
小泉孝太郎の役がただ胡散臭いだけでリアルさがないのもだめだった。まあそういうのに引っかかる未熟な高校生ということではあるんだろうけど、あの講演内容ではあんなに客は来ない。ラブコメだからって仕事のリアルさを軽視してはいけない。マルチの人たちだってもうちょっと話術はうまい。ロング・ショットみたいな方向(ナチスの会合とか)にぶっ飛ぶならぶっ飛べばいいんだけど。
 
ロケがだいたい横浜だったのでいろいろ場所がわかったのは楽しかった。
 
  1. Kiss Me Before It Blows Up(国境を越えてキスをして!)

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭にて。テルアビブに住むユダヤ人のシーラ(モラン・ローゼンブラット)のもとに、ドイツ人のガールフレンド・マリア(ルイーゼ・ヴォルフラム)が越してくる。戦争の過去を許さないホロコースト生存者のシーラの祖母ベルタ(リヴカ・ミカエリ)はマリアに厳しく当たる一方、パレスチナ人のイブラヒム(サリーム・ダウ)と距離を縮める。
 
主人公たちが直面する困難がレズビアンであることに依らず宗教や歴史であるというのは、新しいようでやはりとても保守的に見えてしまう。彼女たちにとってはそれが日常なのかもしれないが、そこはどうしてもハリウッド目線で観てしまう。その分文化や細かい物語で魅せてほしかったが、イスラエルの生活の臨場感のようなものはあまり見えてこない。アホっぽくしてラブコメ感を出すのも無理やりに感じてしまった。
 
シーラの弟は2人のことを学校の課題でドキュメンタリーにしようと撮影しているが、マリアの両親に「娘に相手ができてどう思う?ユダヤ人でも?」みたいな際どいというか失礼な質問するのは相手が嫌な顔して終わりだし、シーラの父親(ジョン・キャロル・リンチ)が「異教徒には俺の孫娘は産ません!」と言っていたのも解決していない。
 
マリアの母親がホロコースト資料館に行って泣き出すのも大概だし、ベルタにマリア一家が謝罪すべきか否かみたいなすごい議論も有耶無耶になった。別にすべて白黒つける必要はないし、そもそもすごく難しい領域に突っ込んでいるのだけれど、高度な風刺・皮肉として処理できていたかというとそうではなかったと思うし、半端なままにはしないでほしい部分だったと思う。
 
あと序盤で「彼女ができたのね?」とベルタがシーラに聞く時字幕の「彼女」についてた傍点はいらなかった。
 
  1. Sul più bello(欲ばりなだけの恋じゃなくて)

 
Netflixイタリアオリジナル。レズビアンとゲイの2人のG.B.F.(男女両方パターンだから良し?)と暮らす難病持ちのマルタ(ルドヴィカ・フランチェスコーニ)。達成すべき目標を作ると良いと医者に言われ、恋人をつくることを決心する。持ち前の前向き精神で「どうせつくるなら一番のイケメンがいい」と、金持ちのボンボンでハンサムなアルトゥーロ(ジュゼッペ・マッジョ)にストーカーチックにアタックする。最初は横柄で鼻持ちならない彼も次第にマルタに惹かれていくが、幸せな交際は長くは続かず…。
 
ベタなシーンをとりあえずかき集めましたという感じでとっちらかってはいたし、ファッションとかはあと一歩だったけど、そのサービス精神と素直に惚れてくれる彼氏が大変よかった。
 
☑️子どもの頃のおままごと結婚式
☑️ポップなBGMでお着替えタイム
☑️閉店後のスーパーのキュートなデート
☑️距離を縮めるカラオケデート
☑️ロマンチックな夜景デート
 
これだけ詰め込んでくれる作品はなかなかない。
 
  1. Friendzone(いつだって友達止まり)

Netflixフランスオリジナル。いつもいい人に見られて女友達ばかり増えるチボー(ミカエル・リュミエール)。そんな女友達の1人のバチェロレッテパーティ会場で出会ったローズ(エヴァ・ダニーノ)に惚れ今度こそはと接近するも、あえなく親友ポジションになってしまう。友人たちの力を借りて恋愛対象として見てもらおうとイメチェンを試みるが…。
 
最初はチボーが本当にチャーミングで相手も可愛くてベタなお着替えタイムとかがあって良かったけど、友達から先に進むために友人たちから恋愛指南を受けてチボーが手慣れていく様がただキモかった。終盤は雑にまとめた。
 
それにしてもヒロインも女友達も出てくる女性が皆スーパーモデルのようだった。
 
  1. The Thing About Harry(原題)

 
ここ最近パッとしない『Grey's Anatomy(グレイズ・アナトミー)』の新インターンたちのなかでも愛されキャラのリーヴァイことジェイク・ボレッリ主演。堅実タイプのゲイ男性サムと交際の長続きしないパンセクシャル男性ハリー(ニコ・テルホ)がenemiesからfriendsになって…。
 
いろいろ雑なB級感はあるけどタイプの違う2人の組み合わせががめちゃくちゃ可愛かった。タイトルはもちろん、流れも往年のラブコメへのオマージュばっちり。
 
(以下ネタバレ)気になったのはサムが親友ステイジア(ブリット・バロン)とやたらベタベタしてたことと、それはまあ友だちのあり方も人それぞれだから良いとして、結局相手のパンセクシャル属性が「親友に手を出す」プロットにつながっていったこと。
 
私は親友とか兄弟に恋の相手を取られたり、親友同士や親友と兄弟が付き合って居心地が悪くなる人にいつも肩入れするけど、そういう主人公ってたいてい逆ギレされて責められるので、主人公があんまり悪者にならないところは大変優しかった。
 
あとカツラジョークだけはいただけんかったな。Fab5のカラモも出てた!
 
  1. Love Hard(ラブ・ハード)

 
Netflixオリジナル。自身のデート体験を記事にしてきたウェブライターのナタリー(ニーナ・ドブレフ)は、新たなネタ&相手を仕入れようとマッチングアプリ上のやりとりで意気投合した彼にサプライズで会いに行く。ところが相手はタグ(ダレン・バーネット)の写真を使ってなりすましていたジョシュ(ジミー・O・ヤン)で…。
 
我らが『The Vampire Diaries(ヴァンパイア・ダイアリーズ)』のニーナ・ドブレフと『Never Have I Ever(私の"初めて"日記)』で天然jockを見事に演じたダレン・バーネットの組み合わせ?!と思ったら、コメディアンのジミー・O・ヤンが相手役。お兄さん役にハリー・シャム・Jrと嬉しいキャスティングだけど、父親役は日系俳優と脇が甘い。
 
ルッキズムがある意味テーマのはずなのに、序盤からキウイアレルギーでナタリーの顔がパンパンに腫れるといういにしえのギャグでドン引きしてやめようかと思った。オチも結局「人は見た目によらない」「自分を偽るのはやめよう」くらいにしかなってなくて掘り下げが浅い。キャンドル作りに凝るジョシュのキャラクターはとても良いんだけど、2人ともわりとドライでときめきの積み上げが足りない。
 
そしてせっかくアジア系の相手役なのに、白人の主人公女性は美人とされてて相手は見た目では選ばれない設定というのはどうなんだろうか。もう1人のイケメンとされる男性もアジア系だからまだいいのかもだけど、彼はヨーロッパ系でもある。やっぱり今は理想論でも最初からどんな見た目の人も肯定されているような話を作ってほしいし、そうでなくルッキズムに踏み込むならもっと丁寧に描く覚悟が必要だと思う。
 
ハリー・シャム・Jrをゲスト的ポジションで遊ばせる前にもっと良い作品で主役にしてくれというのと、B級コメディの主人公をとりあえずBuzzFeed的なウェブメディアで働かせるのをやめてくれというのは声を大にして言いたい。
 
  1. Americanish(原題)

 
キャリア志向でトランプみたいな差別者の政治家をクライアントに持つマーケティング会社に勤めるサム(Aizzah Fatima)、医大志望の妹マリアム(Salena Qureshi)、パキスタン人の医者の結婚相手を探しに新たにアメリカにやってきたいとこのアミーラ(Shenaz Treasury)。サムは警官から好意を寄せられるが真剣交際には消極的、マリアムは学校の彼女がいるイケメンと仲良くなり、アミーラはお見合いを繰り返すがなかなか良い出会いがなく次第にキオスクの店主と距離を縮める。
 
パキスタン系のムスリム女性3人が主人公という設定はなかなか難しいのか、いい人に出会ったら"まず結婚"な流れがカルチャーギャップすぎてとても入り込めなかった。そのまますんなりいくわけではないんだけど、そこに疑問を持つわけでもなく。保守的な価値観と現代的価値観が混在した人間模様をもっとうまく活かせたと思う。
 
『Zoey's Extraordinary Playlist(ゾーイの超イケてるプレイリスト)』のお調子者トビンを演じたカピル・タルヴァルカルが爽やか2枚目な役でびっくり。たしかにかっこいい。
 
  1. A Castle For Christmas(クリスマス・キャッスル)

夫の浮気が原因で離婚し、ショックから(?)自分の小説の人気キャラクターを死なせたことで炎上中の人気ロマンス小説作家ソフィー(ブルック・シールズ)。静かな場所でリフレッシュしようとスコットランドに行く。そこで亡き父の思い出の地である城の窮地を知り城の購入を申し出るが、持ち主のマイルズ(ケイリー・エルウィス)が強情で…。
 
話は本当にいつものNetflixのテキトークオリティだけど、主人公たちが歳に似合わないほど若い見た目の人とかでもなく、だからといって中年の悩み等にフォーカスするでもなく、ただ恋愛していたのが良かった。王族と結婚するとかじゃなくて女性が「城を買う」だし。「城を買う」。
 
気になったのはスコットランドの解像度それでいいんかいというのと、唯一のゲイキャラクターが伴侶を亡くしていてしかもその悲しみで途中までしゃべらない設定だったところ。ターゲットである中年〜高齢者層に阿ってんのか?!とつっかかりたくなってしまった。
 
メイン2人以外は知らないキャストばかりかと思ったら特大ゲストもあり。
 
そして本編以上に気になってしまったのが、(以下ネタバレ)『スイッチング・プリンセス』のキャラクターがカメオ出演していたことで「ネトフリホリデーユニバース」に接続したこと。そろそろ架空の国の場所とかいろいろハッキリさせておかないと辻褄が合わないとツッコミも出始めている。ヴァネッサ・ハジェンズもいい加減に解放してあげてほしい。
 

  1. Single All The Way(シングル・オール・ザ・ウェイ)

 
たぶんNetflix初のゲイラブコメ。ピーター(マイケル・ユーリー)はクリスマスの帰省前に新しい恋人と別れてしまい、長年の親友&ルームメイトのニック(フィレモン・チェンバース)と帰省する。ピーターの母親(キャシー・ナジミー)は地元のジムのインストラクターのジェームズ(ルーク・マクファーレン)とピーターをくっつけようとするが、ほかの家族はピーターとニックが一緒になるべきだと主張しおせっかいを始める…。
 
主役2人はとにかく可愛く家族と仲が良いのも多幸感あって良かったが(マイクロアグレッションは健在だがハピエスト・ホリデーほど辛くない)、2人を周囲がくっつけようとするというメインの筋書きが私にはダメだった。「誰と誰が一緒になるべき」みたいな部分こそラブコメお得意のご都合主義を発揮して、同じ商品を手に取ろうとして手が重なったり昔の覚えてない運命の出会いが発覚したりアクシデントでキススレスレになったりして本人たちに気づかせれば良いのに、周りが押し付けるのはウザい以外の何物でもない。周囲の協力は2人が気づいてからで良い。
 
そのほか動物や子どもたちと接してるところを惚れるポイントにするというシーンが何度もありすぎたり、ブリトニーの曲を取ってつけたように踊っていたり、終始セリフがありすぎて間がまったくなかったり、気になる演出が多々。それと私はジェニファー・クーリッジのギャグキャラ的な使われ方の意味がほんとにわからないと改めて思った。なにが面白いんだあれ。
 
  1. Ancora più bello(もっと、欲ばりなだけの恋じゃなくて)

 
『Sul più bello(欲ばりなだけの恋じゃなくて)』まさかの続編が今日配信された。しかも前作の相手アルトゥーロとは別れている。新しい相手ガブリエルの魅力を伝えてもらわねばならないのに、親友ヤコポの気になる相手トマソ、親友フェデリカの新しい職場の人たち、おまけにアルトゥーロの元カノ(?)とその新しい彼氏の関係まで詰め込もうとしてもうわけがわからない。難病も消えたかと思いきや今度は移植手術するらしい。まだそれでも一応最後まで見届けるか〜と思っていたら、まさかのまさか「つ・づ・く」だ。続くな。
 
※以下12/25に追記
 
16. The Christmas Setup(原題)
 


昨年Netflixより一足先に出ていたLifetimeのゲイクリスマスラブコメ。主人公のヒューゴ(ベン・ルイス)はニューヨークで弁護士としてがんばっており、親友のマデリン(エレン・ウォン)と一緒にミルウォーキーの母親ケイト(フラン・ドレシャー)の元に帰省する。ケイトとマデリンが出かけている間にクリスマスツリーを配達しに来たのはヒューゴの元同級生のパトリック(ブレイク・リー)で…。

帰省したら母親に出会いを仕組まれるところまでは『シングル・オール・ザ・ウェイ』と一緒だけど、周りの押し付けがましさが控えめなだけでこれだけマシになるんだと思った。積極的に誘ってくれる爽やかなパトリックと真面目でいい人感溢れるヒューゴのカップルはかわいい。『スコット・ピルグリム』のエレン・ウォンが久しぶりに見れたのも嬉しかった。

よくあるおまけのようにサブキャラもついでにカップルにされるやつも、そっちがヘテロだと意味があるなと思った。しかもマデリンといい感じになる主人公の兄役俳優(チャド・コンネル)もゲイだ。

しかしとにかく展開は地味だ。2人に訪れる試練といえば主人公の転勤話くらいなのだが、そもそも主人公はニューヨークに住んでいるので後から転勤とか言われてもインパクトがない。加えて地元の古い駅舎の取り壊し問題や昔の街の立役者(?)がゲイだった!という歴史的発見、亡くなったお父さんとの思い出などが詰め込まれるのだが、そんなにてんこ盛りにするわりにはどれも盛り上がらず地味なまま(笑)。

 

17. A Christmas Number One(原題)
 


末期ガンの姪(ヘレナ・ゼンゲル)のために作ったクリスマスソングがレコード会社の目に留まり、ガン患者のためのチャリティ団体に売り上げを寄付することを条件にボーイバンド5togetherに曲を提供することにしたメタルバンドのベーシスト・ブレイク(イワン・リオン)。姪の希望でプロデュースも手がけるうちに、目の敵にしていたレコード会社の担当者メグ(フリーダ・ピントー)と親しくなるが…。

今どき病気の子どもを完全にプロットに利用するだけなのは腹が立つが、とにかくイワン・リオンの魅力が全開だ。子どもたちにせがまれメタルの曲を学校で演奏するイワン、姪と仲良く動画に映るイワン、やめようと誓ったone night standを繰り返ししまったという顔をするイワン、女性と一緒にはしゃぐイワン、姪の病状を聞き悲しみに暮れるイワン…。

楽曲はあまり印象には残らないものの、メタルバンドの曲、ボーイバンドの曲、メグの元カレの女たらしスター(リチャード・フリーシュマン)の曲とどれもいちいちそれっぽく作り込まれており、音楽映画としても十分楽しい。音楽はロビー・ウィリアムズと仕事をしているガイ・チャンバースが手がけている。ボーイバンドのメンバーたち女たらしスターも薄っぺらい役に徹していて、エンドクレジット後にはミュージックビデオのおまけもさんざん見せてくれる(笑)。
 

OP曲

 

5togetherの却下されたクリスマスソング

 
※番外編 Romantic Comedy/ロマンチック・コメディ
 

 
8月にBunkamuraの新サービス「APARTMENT by Bunkamura LE CINÉMA」のラインナップ第1弾として配信された『Romantic Comedy/ロマンティック・コメディ』。大量の映画をコラージュのように引用して気だるいナレーションを入れる構成がまるで青春映画分析ドキュメンタリー『Beyond Clueless(ビヨンド・クルーレス)』と一緒だと思ったら、その音楽担当のエリザベス・サンキーが監督だった。
 
こんな作品あったな、と懐かしんだりこんなのもあるのかーと情報源にしたりはできるけど、ズバリこのタイトルを付けるなら新旧の脚本家やラブコメ常連俳優のインタビューもほしいし、もっと楽しそうに語ってほしい(笑)。白人ヘテロ視点や女性のモノ化に疑問を持つ分析も特に新しくはないので物足りないし、そういう保守性に抗う作品も紹介しているので本当に自己完結している。それにそこで『God's Own Country(ゴッズ・オウン・カントリー)』とかコメディ以外を無理やり挟まずに、ドラマやもっとマイナーな作品でもちゃんといろんなラブコメを紹介するのに時間を割いてほしかった。

『最後の決闘裁判』は誰のための物語なのか

映画をよく観る人であれば、感想について話すとき、好き嫌いは人それぞれで「だから面白い」と感じる人が多いと思う。私も嫌いな映画はとても多いけど、ただ「つまらない」と感じたものであれば、その作品を好きな人がどんなところを面白いと感じたのかはたいてい楽しく聞くことができる。
 
しかし、その感想が人の倫理観に及べば、それはもはや映画の内容についての話ではない。『The Last Duel(最後の決闘裁判)』についてのキネマ旬報の「なぜマルグリットは性被害を告発したのか」という文章が「そんな感想もあるだろう」と受け入れられず炎上したのは、そういうことだろう。
 
私にとっては、この映画が明らかにMeTooをテーマにしているにもかかわらず『羅生門』スタイルを真似ようとしたこと、性的暴行シーンを描いたこと自体が、弱者の尊厳を踏みにじる受け入れられない行為だった。そして、いくら悪気はなかったとしても、その行為が見渡す範囲のほとんどの人から賞賛されていることは、人間不信につながった。
 
こんなに許せない映画のために時間を割くのもばかばかしいけれど、これは映画表現だけの問題ではない。このままにしていると消化不良なまま作品名を見る度に心が削られていくだけなので、せめて感じていることを精いっぱいまとめようと思う。
 
羅生門』形式では女性に寄り添うことはできない
 
この映画は、騎士ジャン・ド・カルージュマット・デイモン)、その旧友のジャック・ル・グリアダム・ドライバー)、ル・グリからのレイプ被害を告発したカルージュの妻マルグリット(ジョディ・カマー)それぞれの視点から同時期の出来事を描いた3章構成になっている。各章のタイトルは"The Truth according to 〜(〜にとっての真実)"と名前が入っているが、3章目のマルグリットのパートに入るときに"The Truth"の文字だけが数秒残されることで、マルグリットが真実を語っている前提であることがわかる。
 
MeToo運動から私たちが学んだことは、「声を上げた人に寄り添う」ことの重要性だ。それは盲目に被害者の証言のみを信じるということではなく、セカンドレイプを防ぐための措置であり、この問題に向き合うために求められる姿勢である。まだ事実を検証しなければいけない段階であるならともかく、誰が真実を言っているか結論を既に出しているこの作品で男たちの視点に時間を割くことは、たとえ結果的に彼らを断罪していても「いったん皆の話を聞いてみましょう」と中道しぐさをとることに他ならない。
 
この映画への主な賞賛で見る「有害な男性性、認知の歪みを描ききった」というのは、マルグリットのパートのみでは不可能だったろうか。いちいち男の目線からも描かないと、彼らの愚かさがわからないだろうか。それは今さら「浮き彫りにされた」ことだろうか。「マルグリットのキャラクターに惹かれ」、「危険を覚悟で声を上げた女性の物語」(WIRED)として作られたこの作品で、男たちのみのシーンはあれほど必要だったろうか。彼らにあれだけ時間を割くこと自体が、その女性にとって屈辱的なことではないのか。ひろゆきやら松本人志やらにジェンダー問題について発言の場を与えてはだめだとメディアに物申してきたのは誰だったか。
 
このスタイルが『羅生門』由来であることはマット・デイモンリドリー・スコットも明言しているが、羅生門の姿勢を否定しアップデートするということを意識した上であったとしても、「被害者も含む全員が嘘を付いている、真実はわからない」という建て付けである作品のスタイルを明確にオマージュすることは、今作の意図を伝える妨げになっている。現に、これだけクリアに宣言しているにも関わらず鑑賞後に「どれが真実なんだろう」と話す人(YouTube)や「マルグリットの平等志向は信ぴょう性が高いとはいえない」などと深読みする人(※当該ブログは現在削除)がいる。リドリー・スコット監督はそれを「アホか」と否定している(同YouTube内)が、自身の認識が甘かったのではないのか。
 

メッセージを伝えるために性的暴行シーンが必要な作品などいらない

 
小さな救いだが、レイプシーンについては批判の声も多数見かける。主な擁護の声は「描かないと事実を疑う人が出る」というものだったが、これは3章構成と同じでMeTooの伝えてきたことに不誠実だ。作品としてはあくまで事実を目撃したからでなく「あなたがそう発言したから信じます」と言う姿勢を示すことが必要なのだ。
 
エロ消費でなく暴力として描き切ったという評価もみかけたが、レイプがひどい暴力であることの再確認は本当に必要だろうか。インティマシー・コーディネーターを入れ、ジョディ・カマーが覚悟を持って臨みアダム・ドライバーがリスペクトを持って作っても、女性への性暴力描写が女性の尊厳を踏みにじるものであることに変わりはない。わかっていて酷いシーンは酷いシーンとして必要性を感じながら観られたというなら、それがエンタメ消費じゃなくてなんなのか。
 
私はこれまでフィクションのレイプシーンで辛くなったことはあまりなかったが、これは本当に泣きそうなほどだった。それは詳細な描写と迫真の演技のせいでもあるけれど、この映画が一見女性に対して良心的な意図を持って作られているようなのに女性を痛めつけるばかりだったので、このシーンがダメ押しになったのだと思う。男性社会を批判するための作品が、結局批判の対象と同じことをしてしまっているのだ。
 
注意書きを入れればいい、辛くなりそうな人は観なければいい、無知な男性の教育になればいいと思った人は、ちょっと立ち止まって、この映画が(少なくとも制作陣の表面上の意図の上では)誰のためのものだったのかをもう一度考えてみてほしい。どうしてもはっきりさせておきたいというなら、ダサくなっても直接描写はせず「レイプシーンは省略します」とでもテロップを入れておけばいいのだ。『Promising Young Woman(プロミシング・ヤング・ウーマン)』では証拠としてのレイプ映像をスマホで見ているという描写でそのスマホ画面は写さないという巧みな方法をとったが、それでも「肝心の部分は見せていないのだから真相はわからない」と疑う声があった。しかしそこで「こういうこともあるから見せれば良かった」と思った人はどれだけいたのだろうか。無知な人達のためにエンタメを後退化させ、人を傷つけることなど映画ファンとして望んでほしくない。
 
本気でこの問題について世の中を啓蒙する気があるのなら、女性の物語を男性主導でエンタメ化することは決してそのための正しい道ではない。女性の物語として尊厳を持たせるものが作れないなら、もっと人を傷つけずにできる方法を教育や政治の現場に飛び込んででも模索すればいい。
 
カルージュによる夫婦間のレイプも描かれていたが、女性がモノとしか見なされない社会で夫婦関係というもの自体の始まりが欺瞞であり、同意など大事にされず心を無にしながら妻が耐えていたという事実も、何も新しいものではない。改めて描写が必要な理由は何だったのだろうか。女性によるセカンドレイプも、「こういうことを言うのがセカンドレイプですよ」と言わんばかりの説明臭さしかなく、その時代に生きる女性のさまざまな苦しみを深みをもって描くつもりなど微塵も感じられなかった。
 
今年同じような文脈で批判されたものに、Amazon Primeのドラマ『Them(ゼム)』があった。1950年代、白人ばかりが住むエリアに越してきた黒人家族が、隣人からも超常現象からも徹底的に痛めつけられる人種ホラーだ。彼らは戦う意志を見せこそするものの10話に渡って怯えつづけ、同作は一体これがtorture pornでなくてなんなのかと激しい批判を浴びた。作品自体を批判せず「辛い人は観なければいい」とだけ言った人は決して多数派ではなかった。

 

禊になってない

 
企画脚本のベン・アフレックマット・デイモンに、今回の題材に関連して決して誇れない過去があることも私がこの作品を否定的に見る大きな要素の一つになっている。テレビ出演中に共演者の胸を掴んだアフレック(ELLE)とMeToo問題に対して「みんな報復しようと多くのエネルギーを割いている気がする」などと不用意な発言をしたデイモン(Rolling Stone)は、それぞれ謝罪はしているので私がそれが十分かをジャッジするのも違うとは思う。しかし彼らがこの題材を扱うことは本人たちの意図がどうあれ禊の意味合いを含むし、実際そのつもりだったと思う。
 
それなのにろくに考えずに3章構成を決め(女性脚本家のニコール・ホロフセナーとMeToo団体の監修を入れたとはいえ6週間でこの脚本を書いたというのは批判に値すると思う)決闘を撮るなら彼だよねといってリドリー・スコットに企画を持ち込んでいる時点で、それは単に題材を利用し自分たちが称賛されるかっこいいエンタメ作品(それがどれだけ皮肉を含んでいたとしても)を作るだけの試みになってしまう。実際フタを開けてみればプレスのとりあげ方は「ベンとマットが24年振りに共作!」と2人にスポットを当てるばかりだ。
 
本当にこれまでの埋め合わせをする気があるなら、現代劇でそれぞれ本人役で出演し、自分自身を断罪したらどうか。そこまでいかなくても、中世フランスという設定は自分たちから批判の矛先を遠ざけ時代設定の魅力を借りすぎではないのか。
 
男が自身の株を上げ、ついでに男を教育するためにこの題材を扱うことのグロテスクさ、その扱い方の稚拙さを批判せず、キネ旬の批評家ばかりを批判する人たちは、女性を拷問する物語を消費したことの罪悪感から目を背けているだけではないのか。
 
私がどれだけ怒ったところで、人の評価が簡単に覆らないのはわかっている。それはほかの題材に関して、この記事のような言い分がまるまる私に跳ね返ってきたことがあるからだ。当事者からのそこまでの訴えを見てもまだ、私のその映画に関する評価は変わっていない。要は、どれだけ自分ごとに寄せることができるかなのだ。ただ、そうした当事者を前にして簡単にその作品を賞賛しないデリカシーと、学び考え続ける姿勢は持ちたい。
 
この映画を楽しんだ人が、この記事を読んでピンとこなかったとしても、フェミニズムMeToo問題についてさらに学んでくれたらと思う。
 

 

追記※これだけ「賞賛されているのを見るのがつらかった」と書いたのに反論になってない反論を長文でコメントされたのでコメント欄は閉じました。私にこれ以上平易な言葉で説明する義務も人の正しさの証明に付き合う義務もありません。違う意見を持つのはけっこうですが自分のブログなりSNSでやってください。すべて「そうは思いません」で返します。